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〔館は台地のはななれば〕

館は台地のはななれば
鳥は岬の火とも見つ
香魚釣る人は藪と瀬を
低くすかしてわきまへぬ

鳥をまがへる赤き蛾は
鱗粉きらとうちながし
緑の蝦を僣しつゝ
浮塵子うんかあかりをめぐりけり

(本文=下書稿2推敲後)



(下書稿2推敲前)

館は台地のはななれば
釣師は川のしるべとし
鳥は岬の火とも見つ
香魚釣る人は瀬と藪と
低くすかしてわきまへぬ

鳥をまがへる赤き蛾は
鱗粉きらとうちながし
緑の蝦を僣しつゝ
浮塵子あかりをめぐりけり



(下書稿1推敲後)

館は台地のはななれば
鳥には岬の火とも見え
沖積面の一里には
誘蛾燈ともはたらきぬ
はた体重の一オンス
鳥をまがへる赤き蛾の
鱗粉きらとおとすあり
浮塵子緑の蝦を僣して
燈のめぐりをはねたるや

秋風吹けば
喧嘩納まり
ひとびとともに談らひて
乳熟なせる稲の穂を
ひともと持ちて来るなり



(下書稿1推敲前)

館は台地のはななれば
鳥には岬の火とも見え
沖積面の一里には
誘蛾燈ともはたらきぬ
体重一オンスありて
鳥のごとき赤き蛾の
きららかに鱗粉をおとせり
くわがたむしピーンと来り
はたちいさなる浮塵子むし
緑の蝦を僣しつゝ
燈のめぐりをはねあるく

秋風吹けば
喧嘩納まり
ひとびとともに談らひて
乳熟なせる稲の穂を
ひともと持ちて来るなり



(先駆形口語詩「来訪」)

来訪

水いろの穂などをもって
三人づれで出てきたな
さきに二階へ行きたまへ
ぼくはあかりを消してゆく
つけっぱなしにして置くと
下台ぢゅうの羽虫がみんな寄ってくる
  ……くわがたむしがビーンと来たり、
    一オンスもあって
    まるで鳥みたいな赤い蛾が
    ぴかぴか鱗粉を落したりだ……
ちゃうど台地のとっぱななので
ここのあかりは鳥には燈台の役目もつとめ
はたけの方へは誘蛾燈にもはたらくらしい
三十分もうっかりすると
家がそっくり昆虫館に変ってしまふ
  ……もうやってきた ちいさな浮塵子うんか
    ぼくは緑の蝦なんですといふやうに
    ピチピチ電燈デンキをはねてゐる……
それでは消すよ
はしごの上のところにね
小さな段がもひとつあるぜ
  ……どこかに月があるらしい
    林の松がでこぼこそらへ浮き出てゐるし
    川には霧がしろくひかってよどんでゐる……
いやこんばんは
  ……喧嘩の方もおさまったので
    まだ乳熟の稲の穂などを
    だいじにもってでてきたのだ……