目次へ  縦書き

雪峡

塵のごと小鳥なきすぎ
ほこ杉の峡の奥より
あやしくも鳴るやみ神楽
いみじくも鳴るやみ神楽

たゞ深し天の青原
雲が燃す白金環と
白金の黒の窟を
日天子奔せ出でたまふ

(本文=下書稿4推敲後)



(下書稿3推敲後)

なだれ

ちりのごと小鳥啼きすぎ
ほこ杉の峡の奥より
あやしくも神楽湧ききぬ

雲が燃す白金環と
白金の黒のいはやを
日天子奔りもこそ出でたまふなり



(下書稿3推敲前)

口碑

若き母織りし麻もて
身ぬちみな紺によそほひ
藁沓に雪軋らしめ
児は町に出で行きにけり

青ぞらのとひかりの下を
ちりのごと小鳥啼きすぎ
雪の蝉またぎと鳴きて
くるみみな枝をさゝげぬ

ほこ杉を雪埋みたる
山峡のその奥ひより
雲が燃す白金環と
白金黒のいはやを
日天子乱れ奔りて
児のすがたすでになかりき

よもすがら雪をうがちて
村人ら児を求めしに
その児の頬かすかにわらひ
唇は笛吹くに似き



(下書稿2推敲後)

ほこ杉たちて雪埋む
この山峡の奥ひより
神楽にはかにうち湧けば
雲が燃す白金環と
白金黒のいはやをば
日天子いま
みだれ奔りいでたまふなり



(下書稿2推敲前)

雲が燃す白金環と
白金黒のいはやをば
日天子いま
みだれ奔りいでたまふなり



(下書稿1「冬のスケッチ」第20葉、21葉 推敲後)

     ※

かばかりも
しづむこゝろ、
雪の中にて
蝉なくらしを。

     ※

若き母や織りけん麻もて
全身紺によそほひて
藁沓に雪軋らしめ
町に出で行く少年あり
青きそらのひかりの下を
小鳥ら、ちりのごとくなきて過ぎたり。
青きそらのひかりに
梢さゝぐるくるみの木あり

そのとき
雪の蝉
また鳴けり

     ※

そらの若き母に
梢さゝぐるくるみの木
くるみのえだには
かぼそき蔓。



(下書稿1「冬のスケッチ」第20葉、21葉 推敲前)

     ※

かばかりも
しづむこゝろ、
雪の中にて
蝉なくらしを。

     ※

そのとき
雪の蝉
又鳴けり。

     ※

若きそらの母の下を
小鳥ら、ちりのごとくなきて過ぎたり。

     ※

そらの若き母に
梢さゝぐるくるみの木
くるみのえだの
かぼそい蔓。