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〔最も親しき友らにさへこれを秘して〕

最も親しき友らにさへこれを秘して
ふたゝびひとりわがあへぎ悩めるに
不純の想を包みて病を問ふと名をかりて
あるべきならぬなが夢の
  (まことにあらぬ夢なれや
   われに属する財はなく
   わが身は病と戦ひつ
   辛く業をばなしけるを)
あらゆる詐術の成らざりしより
我を呪ひて殺さんとするか
然らば記せよ
女と思ひて今日までは許しても来つれ
今や生くるも死するも
なんぢが曲意非礼を忘れじ
もしもなれに
一分反省の心あらば
ふたゝびわが名を人に言はず
たゞひたすらにかの大曼陀羅のおん前にして
この野の福祉を祈りつゝ
なべてこの野にたつきせん
名なきをみなのあらんごと
こゝろすなほに生きよかし

(本文=下書稿推敲後)



(下書稿推敲前)

体温朝より三十八度なれども
絶対の安静を要するにより
藤原にさへこれを秘して
わがあへぎ悩めるに
汝ふたゝび不純の想を
包みて病を問ふと来り
訪ふはあるべきならぬなが夢のねがひ
然らば記せよ
女と思ひて今日までは許しても来つれ
今や生くるも死するも
なんぢが曲意非礼を忘れじ