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訓導

早くもひとり雪をけり
はるかの吹雪をはせ行くは
木鼠捕りの悦治なり

三人ひとしくはせたちて
多吉ぞわらひ軋るとき
寅は溜りに倒れゐし

赤き毛布にくるまりて
風くるごとに足小刻むは
十にたらざる児らなれや

吹雪たればあとなる児
急ぎて前にすがりつゝ
一列遠くうすれ行く

(本文=下書稿2推敲後)



(下書稿2推敲前)

訓導

早くもひとり雪をけり
はるかの吹雪をはせ行くは
木鼠捕りの悦治なり

三人ひとしくはせたちて
多吉ぞわらひ軋るとき
寅は溜りに倒れゐし

赤き毛布にくるまりて
風くるごとに足小刻むは
十にたらざる児らなれや

やがて一列野のきわみ
吹雪たりてあとなる児
急ぎて前に追ひすがる



(下書稿1推敲後)

訓導

露岩まくろきみねみねに
あえかの雪もかゞやけば
教師溜りの戸をひらき
児らを家路に許したり

早くも一人風を截り
はるかの吹雪を過ぎ行くは
木鼠捕りの悦治なり
多吉ぞわらひ軋れるとき
虎は吹雪に倒れゐし
多吉は遁れ虎もまた
雪をけたてゝ走り去る

赤き毛布にくるまりて
風来るごとに足小刻むは
十に足らざる児らなれや

ふゞき来ればあとなる子
急ぎて前に追ひすがる
まもなく児らの黒き影
一つら遠くすぎ行けば
教師溜りの戸をとざし
今日の日記をぞなし初めぬ



(下書稿1推敲前)

サーペンティンのみねみねに
あえかの雪もかゞやけば
教師溜りの戸をひらき
児らに帰れと命じたり

   悦治のごときは
   早くも一人風を截り
   はるかに吹雪を過ぎ行けり

   赤き毛布にくるまりて
   風来るごとに小刻める足

   ふゞき来ればあとなるものの
   いそぎて前に追ひつけり

松みな雪に枝を垂れ
赤き柏の枯葉は鳴れり

   一人ぞ笑ひ軋るとき
   一人は吹雪に倒れたり

雪にあやしき介殼の
その皺ありて飴いろの
西日かすかに照したり