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〔ゆがみつゝ月は出で〕

ゆがみつゝ月は出で
うすぐもは淡くにほへり

汽車のおとはかなく
恋ごゝろ風のふくらし

ペンのさやうしなはれ
東に山の稜白くひかれり

汽車の音はるけく
なみだゆゑ松いとくろし

かれ草はさやぎて
わが手帳たゞほのかなり

(本文=下書稿推敲後)



(下書稿推敲前)

せつなくも月は出で
なみだのなかにて松くろし
うすぐもは吐くりんごの香
鉛筆のさやいづち行きしや

汽車のおとはかなく
恋のこゝろを風ふけり
さらにそらに羊歯あらはれ
すがれのかやはゆすれたり

月はまことの月ならず
鉛の蒸気また密陀僧
青らむ燐の光より
かれ草の中よりわれをひくものあり

ペンのさやいづち行きしや
月の妖魂松をみだし
 (うすぐもははくりんごの香)
白く光れるは
あるべきならぬ氷河の稜

疑ひまつりしに
月天子にておはせしか
かれ草は寂かにひかり
わが手帳さへほのかなり

黄水晶光天をつき
さやぐはすがれのすゝきの穂
おゝせつなし気圏の底
切なきを謝したてまつる

月光さらに天をつき
なみだのなかに松くろし
東の山のふもとにて
赤きは山の火事にはあらず

みなみには雲のオーバル
くろくしてまことさやけし
月天子ひとたびひるがへり
菩薩たち四方をめぐりたまへり



(清書稿(断片))

丘。

せつなくも月は出で
なみだのなかにて松くろし
(うすぐもは吐くりんごの香)
鉛筆のさやいづち行きしや。

汽車のおと はかなく
恋のこころを 風ふけり
さらにそらに羊歯あらはれ
すがれのかやはゆすれたり。

月はまことの月ならず
鉛の蒸気また 密陀僧
鉛の蒸気たちこむる
かれ草の中よりわれをひくものあり

ペンのさやいづち行きしや
月の妖魂松をみだし
(うすぐもははくりんごの香)

(以下原稿なし)