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大菩薩峠の歌

廿日月
かざす刃は音無しの
黒業ひろごる雲のひま、
       その竜之介

風もなき
修羅のさかひを行き惑ひ
すゝきすがるゝいのじ原
       その雲のいろ

日落ちて
鳥はねぐらにかへれども、
人は帰らぬ修羅の旅、
       その竜之介、

(下書稿2推敲後)



(下書稿2推敲前)

大菩薩峠の歌

二日月
かざす刃は音無しの
無明の虚空の流れ星
       その竜之介

風もなき
修羅のさかひを行き惑ひ
すゝきすがるゝいのじ原
       その雲のいろ

日落ちて
鳥はねぐらにかへれども、
人は帰らぬ修羅の旅、
       その竜之介、



(下書稿1推敲後)

月盲ひに
 行きたる魂の
 所も知らず名も知らず
 なみな三十路のけさ掛けと
 一つら加へし筆の跡

身も魂も
 つかれ盲ひて竜之介われとも知らず
 いのじが原に行き惑ふ
 風さへ死したる修羅の国
 すゝきすがるゝ雲のいろ



(下書稿1推敲前)

月盲ひに
 かざす刃は音無しの
 所も知らず名も知らず
 なみな三十路のけさ掛けと
 一つら加へし筆の跡

身も魂も
 つかれ盲ひて竜之介
 いのじが原に行き惑ふ
 風さへ死したる修羅の国
 すゝきすがるゝ雲のいろ



(下書稿3=三原三部ノート64頁)

二日月かざす刃は音無しの
    黒業ひろごる雲のひま
         その竜之介

風もなき修羅のさかひを行き惑ひ
   すゝきすがるゝいのじ原その
           雲のいろ

日は沈み鳥はねぐらにかへれども
   ひとはかへらぬ修羅の旅
         その竜之介



(下書稿4)

二日月
 かざす刃は音なしの
 みそらも二つと切りさぐる
          その竜之介

日は落ちて
   鳥はねぐらにかへれども
     ひとはかへらぬ 修羅の旅



※下書稿3、4は下書稿2との前後関係が定かでない。独立用紙に 書かれた4は、最終形態を補遺詩篇2(第6巻)に本文として提出 した。