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文語詩100/90

〔一才のアルプ花崗岩みかげを〕

一才のアルプ花崗岩みかげを、   おのも積む孤輪車ひとつわぐるま
(山はみな湯噴きいでしぞ) 髪赭きわらべのひとり。
(われらみなぬしとならんぞ) みなかみはたがねうつ音。
おぞの蟇みちをよぎりて、   にごり谷けぶりは白し。



(下書稿2推敲後)

髪赭きわらはべふたり
一才のアルプみかげを
おのも積む孤輪車ひとつわぐるま
雨くらき谷をくだりぬ

たがねうつ音みなかみにしげく
わらはべ二人その髪赭き
おのも積み押すひとつわぐるま
にごりの谷のけぶりはしろし

山山いまぞ湯噴きいでしと
ひとりは叫べどひとりいらえず
ひたすら秋風木々にどよみ
蟇こそ黒くみちをよぎれ



(下書稿2推敲前)

髪赭きわらはべふたり
おのおのに押すや孤輪車

(山山は湯噴きいでしぞ)
みなかみはたがねうつ音
(また蟇めみちにいでこし)
さきなるはさとあしぶみし

にごり谷しろくけぶりし
秋雨のどよみいでけり



(下書稿1推敲後)

にごり谷雨はくらきを
髪赭きわらはべふたり
おのおのに木ぐるまを押す

「峯々に湯噴きいづらし
ふたりしてもうけをせずや」
うしろなるわらべのさけび

「また蟇めこたびもいでし」
さきだてるわらべははたと
地をふみて蟇ををどしぬ

たがねうつ音をはるかに
にごり水白きけぶりを
こらやがてよぎり行きけり



(下書稿1推敲前)

にごり谷雨はくらきを
みなかみのいづこにかあれ
ひとあまたたがねうつ音

髪赭きわらはべひとり
木ぐるまに切石のせて
橋のべにぼうとたゞずむ

何鳥ぞ朱の尾せるもの
いくめぐり谷をのぼりて
にごり水白くけぶりす

さらにまたわらはべひとり
みね這へる雲をゆびさし
温泉ぞ湧くと叫び出でくる