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文語詩100/87

〔腐植土のぬかるみよりの照り返し〕

腐植土のぬかるみよりの照り返し、材木の上のちいさき露店。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに、二銭の鏡あまたならべぬ。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに、すがめの子一人りんと立ちたり。
よく掃除せしラムプをもちて腐植土の、ぬかるみを駅夫大股に行く。
風ふきて広場広場のたまり水、いちめんゆれてさゞめきにけり。
こはいかに赤きずぼんに毛皮など、春木ながしの人のいちれつ。
なめげに見高らかに云ひ木流しら、鳶をかつぎて過ぎ行きにけり。
列すぎてまた風ふきてぬかり水、白き西日にさゞめきたてり。
西根よりみめよき女きたりしと、角の宿屋に眼がひかるなり。
かっきりと額を剃りしすがめの子、しきりに立ちて栗をたべたり。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに 二銭の鏡売るゝともなし。



(定稿推敲前)

駅前のぬかるみよりの照り返し、材木の上のちいさき露店。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに、二銭の鏡あまたならべぬ。
ぬかるみの光を負ひてすがめの子、すがめの子一人りんと立ちたり。
掃除せしラムプをもちて腐植土の、ぬかるみを駅夫大股に行く。
風ふきて広場広場のたまり水、いちめんゆれてさゞめきにけり。
こはいかに赤きずぼんに毛皮など、春木ながしの人のいちれつ。
なめげに見高らかに云ひ木流しら、鳶をかつぎて過ぎ行きにけり。
列すぎてまた風ふきてぬかり水、白き西日にさゞめきたてり。
西根よりみめよき女きたりしと、角の宿屋に眼がひかるなり。
かっきりと額を剃りしすがめの子、しきりに立ちて栗をたべたり。
腐植土のぬかるみよりの照り返しに 二銭の鏡売るゝともなし。



(習字稿 断片)

ぬかるみにりんと立ちたるすがめの子たゞひたすらに栗を食べたり



(下書稿3推敲後)

腐植土のぬかるみよりの照り返し
材木の上のちいさき 露店

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまた ならべぬ

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
すがめの子ひとりりんとたちたり

腐植土のぬかるみよりの照り返しを
駅夫は截りて 大股に行く

風ふけばそのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり

こはいかに赤きずぼんに毛皮など
春木ながしのひとの いちれつ

鳶をかつぎて大手ふり高らかに云ひびたびたと
ぬかるみをこそよこぎりて行け

列すぎて風うち吹きてぬかり水
白き西日に さゞめきたてり

腐植土のぬかるみよりの照り返しを
よき女来れば角の宿屋の目がひかるなり

ぬかるみにりんと立ちたるすがめの子
たゞひたすらに栗をたべたり

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡 売るゝともなし



(下書稿3推敲前)

腐植土のぬかるみよりの照り返し
材木の上のちいさき 露店

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまた ならべぬ

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
すがめの子ひとりりんとたちたり

腐植土のぬかるみよりの照り返しを
駅夫は截りて 大股に行く

風ふけばそのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり

こはいかに赤きずぼんに毛皮など
春木ながしのひとの いちれつ

ほこらに見高らかに云ひびたびたと
ぬかるみをこそよこぎりて行け

列すぎて風うち吹きてぬかり水
白き西日に さゞめきたてり

腐植土のぬかるみよりの照り返しを
よき女来れば角の宿屋の目がひかるなり

ぬかるみにりんと立ちたるすがめの子
たゞひたすらに栗をたべたり

腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡 売るゝともなし



(下書稿2推敲後)

こは駅前の雪どけの
ぬかるみよりの照り返し
酸えて積まれし松角に
ちさき露店をひらきたる

二銭の鏡数あまた
そらをうつしてならぶれば
ひかりを負ひてぬかるみに
すがめのわらべ立ちてけり

やまの方より風ふきて
水さゞめきてゆられけり
よく掃除せしラムプもち
駅夫は南に行けるあと

赤きずぼんに毛皮など
春木ながしの人の列
高らかに云ひなぷげに見
鳶をかつぎてすぎにけり

みめよき女きたりしと
宿屋に眼ひかりけり
また風吹きてぬかり水
白き西日にそよぐころ

りんと立ちたるすがめの子
ひたすら栗をたうぶれば
ひかりわずらふぬかるみを
二銭の鏡売るゝともなし



(下書稿2推敲前)

こは駅前の腐植土の
ぬかるみよりの照り返し
材木のうへのちいさき露店

げに二月の腐植土の
ぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまたならべぬ

はるかにひかる硫黄山
さなかに負ひてぬかるみを
すがめの子一人りんとたちたり

よく掃除せしラムプもち
そのぬかるみの照り返しを
駅夫は截りて大股に行く

やまの方より風ふけば
このぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり

あゝこはいかになにごとぞ
赤きずぼんに毛皮など
春木ながしの人のれつ
高らかに云ひなぷげに見
大手うちふりびたびたと
ぬかるみをこそよこぎりて行け

さはさりながらいまはまた
風うち吹きてぬかり水
白き西日にさゞめきたてり

硫黄山光るかたよりたゞひとり
みめよし女きたりしと
角の宿屋の眼がひかるなり

頭をそりてぬかるみに
りんと立ちたる男の子
たゞひたすらに栗をたべたり

ひかりわずらふ腐植土の
ぬかるみよりの照り返し
三銭の鏡うるゝともなし



(下書稿1推敲後3)

こは駅前の腐植土フイマスのぬかるみよりの照り返し
材木のうへのちいさき露店
げにも二月の腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまたならべぬ
はるかにひかる硫黄山せなかに負ひてぬかるみを
すがめの子一人りんと立ちたり
よく掃除せしラムプもちそのぬかるみの照り返しを
駅夫は截りて大股に来る
やまの方より風ふけばこのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり
こはいかになにごとぞ
赤きずぼんに毛皮など
春木ながしの人のいちれつ
高らかに云ひ大手うちふりびたびたとほこらに見
ぬかるみをこそよこぎりて行け
ひかりわずらふ腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡売るゝともなし
列すぎてさはさりながらいまはまた風うちふきてぬかり水
白き西日にさゞめきたてり
硫黄山光るかたよりたゞひとり
みめよき女来りしと角の宿屋の目がひかるなり
頭をそりてぬかるみにりんと立ちたる男の子
たゞひたすらに栗をたべたり



(下書稿1推敲後2)

こは駅前の腐植土フイマスのぬかるみよりの照り返し
材木のうへのちいさき露店
げにも二月の腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまたならべぬ
はるかにひかる硫黄山せなかに負ひてぬかるみを
すがめの子一人りんと立ちたり
よく掃除せしラムプもちそのぬかるみの照り返しを
駅夫は截りて大股に来る
やまの方より風ふけばこのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり
こはいかに
騎兵ずぼんに毛皮着て
春木ながしの人の一つら
ぬかるみをこそよこぎりて行け
腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡売るゝともなし
風ふきてまた風ふきてぬかり水
白き西日にさゞめきたてり
硫黄山光るかたよりたゞひとり
みめよき女来りしと角の宿屋の目がひかるなり
   のぬかるみよりの照り返しに
すがめの子ひとり栗をたべたり



(下書稿1推敲後1)

こは駅前の腐植土フイマスのぬかるみよりの照り返し
材木のうへのちいさき露店
げにも二月の腐植土のぬかるみよりの照り返しに
三銭の鏡あまたならべぬ
はるかにひかる硫黄山せなかに負ひてぬかるみを
すがめの子一人りんと立ちたり
よく掃除せしラムプもちそのぬかるみの照り返しを
駅夫は截りて大股に来る
やまの方より風ふけばこのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてさゞめきにけり
硫黄山光るかたよりたゞひとり
みめよき女来りしと角の宿屋の目がひかる
   のぬかるみよりの反照を
いまよぎり行く一列の
赤きズボンの春木ながしら



(下書稿1推敲前)

腐植土フイマスのぬかるみよりの照り返し
材木のうへのちいさき露店
   ぬかるみよりの照り返しに
すがめの子一人りんとたちたり
   ぬかるみよりの照り返しを
駅夫大股に截りて来る
風ふけばフィーマスのぬかるみのたまり水
いちめんゆれてかゞやけり
   ぬかるみよりの照り返し
よき女来れば角の宿屋の眼がひかる
   ぬかるみよりの反照を
いまよぎり行く一列の
春木ながしの赤ズボン