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文語詩100/79

黄昏

花さけるねむの林を、   さうさうと身もかはたれつ、
声ほそく唱歌うたひて、  屠殺士の加吉さまよふ。

いづくよりか烏の尾ばね、 ひるがへりさと堕ちくれば、
黄なる雲いまはたえずと、 オクターヴォしりぞきうたふ。



(下書稿3推敲後)

黄昏

花さけるねむの林を
さうさうと身もかはたれつ
こゑほそく唱歌うたひて
屠殺士の加吉さまよふ

いづくよりか烏の尾ばね
ひるがへり さと堕ち来れば
黄なる雲いまはたえずと
オクターヴォ しりぞきうたふ



(下書稿3推敲前)

黄昏

花さけるねむの林を
さうさうと身もかはたれつ
こゑほそく唱歌うたひて
屠殺場の 吉ぞさまよふ

いづくよりか烏の尾ばね
ひるがへり さと堕ち来れば
雲の黄に いまは得たえず
オクターヴ しりぞきうたふ



(下書稿2推敲後)

工匠

花さけるねむの林に
さうさうと身もかはたれつ
屠殺場の寺井小助は
声ほそく唱歌うたへり

いづくよりか烏の尾ばね
ひるがへりさと落ち来り
オクタヴをとみに下して
ひと雲の黄を仰ぎたり



(下書稿2推敲前)

花さけるねむの林を
さうさうと身もたそがれて
たゞひとりさまよひくるは
銅壺屋のあるじならん

いづくよりか烏の羽ばね
ひるがへりさと落ち来り
銅壺屋は「左勝手ギッチョ」と
つぶやきて黄の雲を視る



(下書稿1推敲後)

銅壺屋

鋳物屋の寺井吉助
組合へ納入を了へ
花さけるねむの林に
たそがれをひとりさまよふ

いづくよりか 烏の尾ばね
ひるがへり さと落ち来り
小助はも物?むさまに
舌打ちつ黄の雲を見る



(下書稿1推敲前)

鋳物屋の   寺井小助は
たそがれを  半天かづき
花さける   ねむの林に
たゞひとり  さすらひにけり

いづくよりか 烏の羽ばね
ひるがへり  落ちて来しかば
小助そを   手にうけもちて
嗅ぎながら  黄の雲を見ぬ



(関連する短歌 歌稿B 大正三年四月)

197

花さける
ねむの林のたそがれを
からすのはねを嗅ぎつゝあるけり。

 

197a

いづこよりか
鳥の尾ばね
落ちきたりぬ
ねむの林の
たそがれを行けば