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文語詩100/78

〔厩肥をになひていくそたび〕

厩肥をになひていくそたび、 まなつをけぶる沖積層アリビーム
水の岸なる新墾畑にひばりに、  往来もひるとなりにけり。

エナメルの雲 鳥の声、   唐黍焼きはみてやすらへば、
熱く苦しきその業に、    遠き情事のおもひあり。



(下書稿4推敲後)

厩肥をになひていくそたび
まなつをけぶる沖積層アリビーム
水の岸なる新墾畑にひばり
往来もひるとなりにけり

エナメルの雲 鳥の声
唐黍きみ焼きはみてやすらへば
熱く苦しきその業に
遠き情事のおもひあり



(下書稿4推敲前)

厩肥の束をせなにして
まひるをけぶる沖積層アリビーム
鉛の水の岸辺なる
今日の耕地にいたりなん

エナメルの雲 鳥の声
唐黍きみ焼きはみてやすらへば
熱く苦しきその業の
遠き情事のごとくなり



(下書稿3推敲後)

厩肥の堆はぬくらみて
赤砂利崖の下にあり
耕地はけぶる沖積層アリビーム
鉛の水の岸にあり

エナメルの雲鳥の声
唐黍焼きはみてやすらへば
熱く苦しきその業の
遠き情事のごとくなり



(下書稿3推敲前)

厩肥の束は崖にあり
畑は遠き沖積の
鉛の水の岸にあり

エナメルの雲鳥の声
唐黍焼きはみてやすらへば
熱く苦しきその業の
遠き情事のごとくなり



(下書稿2)

厩肥の束をせなにして
まひるをけぶるアリビーム
鉛の水の岸辺なる
今日の耕地にいたりなん



(下書稿1 口語詩を文語詩化する手入れ)

青きけむりに唐黍を焼き
ポンテローザを皿に盛り
若杉のほずゑの chrysocolla を見れば
たのしく豊けき朝餐なのに
なんぞや落ち着かないのは
今日も川ばたの荒れた畑の
(約4文字分空白)余る切り返しが
胸いっぱいにあるためらしい
エナメルの雲鳥の声、
更にひともと唐黍焼けば
熱く苦しきその業も
遠き情事のごとくなり



(下書稿1文語詩化のためのメモ)

碧煙もって玉蜀黍コンを灼き
蕃茄塩蔵をもって皿に盛り
稚杉の新梢硅孔雀石クリソコラなるを観れば
これを林中の盛衰となす



(先駆形口語詩「〔青いけむりで唐黍を焼き〕」)

七三四

〔青いけむりで唐黍を焼き〕

一九二六、八、二七、

青いけむりで唐黍を焼き
ボンデローザも皿に盛って
若杉のほずゑのchrysocollaを見れば
たのしく豊かな朝餐な筈であるのに
こんなにも落ち着かないのは
今日も川ばたの荒れた畑の切り返しが
胸いっぱいにあるためらしい
  ……エナメルの雲鳥の声……
強いてもひとつ
ふさふさ紅いたうもろこしの毛をもぎり
その水いろの莢をむけば
熱く苦しいその仕事が
百年前の幽かなことのやうでもある