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文語詩100/76

そは一ぴきのエーシャ牛、夜の地靄とかれ草に、角をこすりてたはむるゝ。

窒素工場の火の映えは、   層雲列を赤く焦き、
鈍き砂丘のかなたには、   海わりわりとうち顫ふ、
さもあらばあれ啜りても、  なほ啜り得ん黄銅の
月のあかりのそのゆゑに、  こたびは牛は角をもて、音高く
柵を叩きてたはむるゝ。



(定稿推敲前)

そは一ぴきのエーシャ牛、夜の地靄とかれ草に、角をこすりてたはむるゝ。

窒素工場の火の映えは、   層雲列を赤く焦き、
鈍き砂丘のかなたには、   海わりわりとうち顫ふ、
さもあらばあれ啜りなば、  なほ啜り得ん黄銅の
月のあかりのそのゆゑに、  こたびは牛は角をもて、
柵を叩きてたはむるゝ。



(下書稿推敲後)

そは一ぴきのエーシャ牛
夜の地靄とかれ草に
角をこすりてたはむるゝ

窒素工場の火の映えは
層雲列を赤く焦き
鈍き砂丘のかなたには
海わりわりとうちふるふ
さもあらばあれ啜りても
なほ啜り得ん黄銅の
月のあかりのそのゆゑに
こたびは牛は頭もて
柵を叩きてたはむるゝ



(下書稿推敲前)

そは一ぴきのエーシャ牛
低き地靄とかれ草に
角をこすりてたはむるゝ

パルプ工場のの照りは
夜なかの雲を赤く焦き
鈍き砂丘のかなたには
海どんどんとうち叩く
さもあらばあれ啜りても
なほ啜り得ん黄銅の
月のあかりをうれしみて
こたびは牛の角をもて
柵を叩きてたはむるゝ



(先駆形口語詩「一二六 牛」)

一二六

一九二四、五、二二、

一ぴきのエーシャ牛が
草と地靄に角をこすってあそんでゐる
うしろではパルプ工場の火照りが
夜なかの雲を焦がしてゐるし
低い砂丘の向ふでは
海がどんどん叩いてゐる
しかもじつに掬っても呑めさうな
黄銅いろの月あかりなので
牛はやっぱり機嫌よく
こんどは角で棚を叩いてあそんでゐる