目次へ  縦書き

文語詩100/72

四時

時しも岩手軽鉄の、  待合室の古時計、
つまづきながら四時うてば、  助役たばこを吸ひやめぬ。

時しも赭きひのきより、  農学生ら奔せいでて、
雪の紳士のはなづらに、  雪のつぶてをなげにけり。

時しも土手のかなたなる、  郡役所には議員たち、
視察の件を可決して、  はたはたと手をうちにけり。

時しも老いし小使は、  豚にえさかふバケツして、
農学校の窓下を、  足なづみつゝ過ぎしなれ。



(下書稿3推敲後2)

時しも岩手軽鉄の
待合室の古時計、
つまづきながら四時うてば
助役たばこを吸ひにけり

時しも赭きひのきより
農学生ら奔けいでて
雪の紳士のはなづらに
雪のつぶてをなげにけり

時しも土手のかなたなる
郡役所には議員たち
視察の件を可決して
はたはたと手をうちにけり

時しも老いし小使は
豚にえさかふバケツして
農学校の窓下を
足なづみつゝ過ぎしなれ



(下書稿3推敲後1)

宿直室の古時計
つまづきながら四時うてば
赭きひのきのそがひより
寄宿生ら奔り出づ。

雪の紳士のはなづらに
つぶてをしげになげたれば
白きけぶりのほのかにて
雲の削げは黄に映えぬ

このとき土手のかなたなる
郡役所には議員たち
視察の件を可決して
はたはたと手をうちてあり

さあれば老いし小使は
豚にえさかふバケツして
ガラスむなしき窓下を
足なづみつゝ過ぎしなれ



(下書稿3推敲前)

宿直室の古時計
つまづきながら四時うてば
赭きひのきのそがひより
寄宿生ら奔けいでて
雪の紳士のはなづらに
つぶてをしげになげたれば
ほのかに白きけぶりはあがり
雲の削げは黄にひかりけり

このとき老いし小使は
豚にえさかふバケツして
小屋の横を過ぎしなれ



(下書稿2推敲後)

宿直室の古時計
つまづきながら四時うてば、
寄宿生ら奔せいでて
五人ひとしくうちならび
雪の紳士の肩胸に
つぶてをしげになげたれば
ほのかに白きけぶりはあがり
雲の剥げは黄にひかりけり



(下書稿2推敲前)

小使室のうしろにて
つまづきながら四時うてば、
寄宿生ら奔せいでて
五人ひとしくうちならび
雪の紳士の肩胸に
つぶてをしげになげたれば
ほのかに白きけぶりはあがり
雲の剥げは黄にひかりけり



(下書稿1推敲後)

ひのき茶いろにゆらぎつゝ
時計つめたく四時うてば
泳ぐがごときかたちして
寄宿生ら出で来り
雪の紳士のと鼻づらに
つぶてをしげになげたれば
ほのかに白きけぶりはあがり
雲の剥げは黄にひかりけり
豚に飼をばやらんとて
老ひし仕丁の足なづみ
バケツをさげて過ぎ行けば
赤きひのきのかなたより
春の羽虫らおどり出づ



(下書稿1推敲前)

ひのき茶いろにゆらぎつゝ
つめたきくれのちかづけば
寄宿生ら出で来り
教師まがひの雪紳士スノーマン
雪のつぶてをなげたれば
ほのかに雪のけぶりはあがり
雲の剥げは黄にひかりけり