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文語詩100/71

〔塀のかなたに嘉菟治かも〕

塀のかなたに嘉菟治かも、    ピアノぽろろと弾きたれば、
一、あかきひのきのさなかより、 春のはむしらをどりいづ。
二、あかつちいけにかゞまりて、 烏にごりの水のめり。

あはれつたなきソプラノは、   ゆふべの雲にうちふるひ、
灰まきびとはひらめきて、    桐のはたけを出できたる。



(下書稿)

女学校附近

塀のかなたに嘉菟治かも
ピアノぽろろと弾きたれば
一、あかきひのきのさなかより
  春のはむしらをどりいづ
二、あかつちいけにかゞまりて
  烏にごりの水のめり

あはれつたなきソプラノは
ゆふべの雲にうちふるひ
灰まきびとはひらめきて
桐のはたけを出できたる。




※歌曲中「あかきひのきのさなかより/春のはむしらをどりいづ」 は文語詩未定稿「〔雲を濾し〕」校異中の「赤きひのきのなかより は/春の羽虫らおどり出づ」または「四時」下書稿(1)の手入れ 詩句中の「赤きひのきのかなたより/春の羽虫らおどり出づ」から 採っていると思われる。




※「あかつちいけにかゞまりて/烏にごりの水のめり」は「冬のス ケッチ」(第一章)第39葉の第三章後半「ねばつちいけにからす 居て/からだ折りまげ水のめり」から採ったものであろう。