目次へ  縦書き

文語詩100/69

〔ひかりものすとうなゐごが〕

ひかりものすとうなゐごが、 ひそにすがりてゆびさせる、
そは高甲の水車場の、    こなにまぶれしそのあるじ、
にはかに咳し身を折りて、  水こぼこぼとながれたる、
よるの胡桃の樹をはなれ、  肩つゝましくすぼめつゝ、
古るたる沼をさながらの、  西の微光にあゆみ去るなり。



(下書稿4推敲後)

ひかりものすとうなゐごが
ひそにすがりてゆびさせる
そは高常の水車場の
こなにまぶれしそのあるじ
にはかに咳し身を折りて
水こぼこぼとながれたる
よるのくるみの木をはなれ
肩つゝましくすぼめつゝ
古りたる沼のごとくなる
西の微光にあゆみ去るなり



(下書稿4推敲前)

ひかりものすとうなゐごが
ひそにすがりてゆびさせる
そは高常の水車場の
こなにまぶれしそのあるじ
にはかに咳し身を折りて
水路を渡り西ぞらの
古りたる沼のごとくなる
かなたへしづにあゆみさる



(下書稿3推敲後)

ひかりものすとうなゐごが
ひそにすがりてゆびさせる
そは高常の水車場の
こなにまぶれしそのあるじ
にはかにせきし身を折りて
よるのくるみの木のしたに
水路を渡り西ぞらの
水あかりせる西天に
いまつゝましくあゆみさる



(下書稿3推敲前)

やみとかぜとのかなたをば
ひかりものすとうなゐごの
ひそにすがりてゆびさせる
そは高常の水車場の
こなにまぶれしそのあるじ
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西天に
いまつゝましくあゆみさる



(下書稿2推敲後2)

やみとかぜとのかなたをば、
ひかりものすとうなゐごの、
ひそにすがりて指すせば、
そは高清の水車場の
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西方に
いまつゝましく歩み去る



(下書稿2推敲後1)

やみとかぜとのかなたをば、
ひかりものすとうなゐごの、
ひそにすがりて指させば、
こなにまぶれし水車屋の
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西天に
いまつゝましく歩み去る



(下書稿2推敲前)

やみとかぜとのかなたにて
光りものとも見えにける
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西天に
いまつゝましく歩み去る



(下書稿1)

風の中を
なかんとていでたてるなり
千人供養の
石にともれる二燭の電燈

やみとかぜとのかなたにて
光りものとも見えにける
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西天に
いとつゝましく歩み去る



※下書稿1の前半部分は「病技師〔一〕」の下書稿となる



(先駆形口語詩「冬のスケッチ 13(部分)」)

やみとかぜとのなかにして
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし歩みさる
西天なほも 水明り。