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文語詩100/66

巨豚

巨豚ヨークシャ銅の日に、  金毛となりてかけ去れば、
棒をかざして髪ひかり、   追ふや里長のまなむすめ。

日本里長森を出て、     小手をかざして刻を見る、
鬚むしやむしやと物喰むや、 麻布も青くけぶるなり。

日本の国のみつぎとり、   里長を追ひて出で来り、
えりをひらきてはたはたと、 紙の扇をひらめかす。

巨豚ヨークシャ銅の日を、  こまのごとくにかたむきて、
旋ればくだつ栗の花、 消ゆる里長のまなむすめ。



(下書稿推敲後2)

巨豚ヨークシャ 銅の日に
金毛となりて かけ去れば
棒をかざして髪ひかり
追ふや里長のまなむすめ

日本里長森を出で
小手をかざして刻を見る
鬚むしやむしやと物喰むや
麻布も青くけぶるなり

日本の国のみつぎとり
里長を追ひて森を出でくれば
えりをひらきてはたはたと
紙の扇をひらめかす

巨豚ヨークシャ 銅の日を
こまのごとくにかたむきて
めぐればくだしつ栗の花
消ゆる里長のまなむすめ



(下書稿推敲後1)

巨豚ヨークシャ 銅の日に
金毛となりて かけ去れば
棒をかざして髪ひかり
追ふや里長のまなむすめ

日本里長森を出で
小手をかざして刻を見る
鬚むしやむしやと物喰むや
麻布も青くけぶるなり

日本の国のみつぎとり
里長を追ひて森を出づ
里長すなはち森に入り
つかさしたがひ森に入る

巨豚ヨークシャ 銅の日に
こまのごとくにかたむきて
めぐればめぐる栗花咲ける黒森を
消ゆる里長のまなむすめ



(下書稿推敲前)

巨豚ヨークシャ 西の陽に
金毛となりて かけり行く
棒をかざして髪ひかる
日本里長のまなむすめ

けむりて青き麻布あざぶ着て
日本里長森を出づ
鬚むしやむしやと物喰みつ
小手をかざして刻を見る

日本の国のみつぎとり
里長を追ひて森を出づ
梢枯れ立ちし槻の木に
ぐらとゆれたるゆふてるひ

巨豚ヨークシャかゞやきて
こまのごとくにかゞやきて
めぐればめぐる栗花咲ける黒森を
消ゆる里長のまなむすめ



(先駆形口語詩 推敲後)

あの大もののヨークシャ豚が
けふははげしい金毛〔ケ〕に変り
独楽よりひどく傾きながら
西日をさしてかけてゐる
棒をかざして髪もひかる
日本里長のまなむすめ
うら枯れ立ちし槻の木に
ぐらとゆるるは夕日の銅
青きけむりの麻布着て
里長ぽろと森を出づ
鬚むしゃむしゃともの噛みつ
小手をかざして刻を見る



(先駆形口語詩「一〇三二 〔あの大もののヨークシャ豚が〕」)

一〇三二

〔あの大もののヨークシャ豚が〕

一九二七、四、七、

あの大もののヨークシャ豚が
けふははげしい
金毛に変り
独楽よりひどく傾きながら
西日をさしてかけてゐる
かけてゐる
かけてゐる
真っ黒な森のへりに沿って
まだまっしぐらにかけてゐる
追ってゐるのは棒をかざして髪もひかる
日本島の里長のむすめ
うら枯れかかった槻の木に
ぐらぐらゆれてゐるのは夕日

里長が森をぽろっと出る
なにかむしゃむしゃ食ひながら
小手をかざしてそらを見る