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文語詩100/60

〔鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし〕

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし。

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし、 黒雲そこにてたゞ乱れたり。

七つ森の雪にうづみしひとつなり、 けむりの下を逼りくるもの。

月の下なる七つ森のそのひとつなり、 かすかに雪の皺たゝむもの。

月をうけし七つ森のはてのひとつなり、 さびしき谷をうちいだくもの。

月の下なる七つ森のその三つなり、 小松まばらに雪を着るもの。

月の下なる七つ森のその二つなり、 オリオンと白き雲とをいたゞけるもの。

七つ森の二つがなかのひとつなり、 鉱石かねなど堀りしあとのあるもの。

月の下なる七つ森のなかの一つなり、 雪白々と裾を引くもの。

月の下なる七つ森のその三つなり、 白々として起伏するもの。

七つ森の三つがなかの一つなり、 貝のぼたんをあまた噴くもの。

月の下なる七つ森のそのはての一つなり、 けはしく白く稜立てるもの。

稜立てる七つ森のそのはてのもの、 旋り了りてまこと明るし。



(下書稿2推敲後)

この月の夜を鶯宿は
雪ほとほとと降れるらし

そは鶯宿のあたりにて
黒雲みだれ波立てり

野は雪青くかゞやきて
けむりの影もあきらけし

雪にうづみし七つ森
けむりの下にひらけくる

七つの森は月うけて
雲のはざまにねむるなり

七つの森のそのひとつ
かすかに雪の皺たゝみ

七つの森のまたひとり
さびしき谷をうちいだく

七つの森のその三つ
小松まばらに雪着たり

七つの森のその二つ
ましろき雪をいたゞけり

森の二つのそのひとつ
鉱石かねなど堀りしあとのあり

森のはづれのその一つ
雪に白々裾引けり

七つの森のその三つなり
たゞ白白と起伏する

森の三つの一つなり
貝のぼたんをあまた噴く

雪のいなむらしろけむり
でんしんばしら黒の影

月のあかりの七つ森
ひとつは白く稜立てり

月の下にて七つ森
うしろをめぐり汽笛鳴れり



(下書稿2推敲前)

この月の夜を鶯宿は
雪ほとほとと降れるらし

そは鶯宿のあたりにて
黒雲みだれ波立てり

野は雪青くかゞやきて
けむりの影もあきらけし

雪にうづみし七つ森
けむりの下にひらけくる

七つの森は月うけて
雲のはざまにねむるなり

七つの森のそのひとつ
かすかに雪の皺たゝみ

七つの森のまたひとり
さびしき谷をうちいだく

七つの森のその三つ
小松まばらに雪着たり

七つの森のその二つ
ましろき雪をいたゞけり

七つの森のその二つ
鉱石かねなど堀りしあとのあり

森のひとつは坊主にて
雪に白々裾引けり

七つの森のその三つなり
たゞ白白と起伏する

森の三つの一つなり
貝のぼたんをあまた噴く

雪のいなむらしろけむり
でんしんばしら黒の影

月のあかりの七つ森
ひとつは白く稜立てり

月の下にて七つ森
うしろをめぐり汽笛鳴れり



(下書稿1推敲後)

橋場線七つ森下を過ぐ

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし
黒雲そこにてたゞみだれたり

七つ森の雪にうづみしひとつなり
けむりの下を近みくるもの

月の下なる七つ森のそのひとつなり
かすかに雪の皺たゝむもの

月をうけし七つ森のはてのひとつなり
さびしき谷をうちいだくもの

月の下なる七つ森のその三つなり
小松まばらに雪を着るもの

月の下なる七つ森のその二つなり
オリオンと白き雲とをいたゞけるもの

七つ森の二つがなかのひとつなり
鉱石かねなど堀りしあとのあるもの。

月の下なる七つ森のなかの一つなり
雪白々と裾を引くもの

月の下なる七つ森のその三つなり
白々として起伏するもの

七つ森の三つがなかの一つなり
貝のぼたんをあまた噴くもの

月のあかりの七つ森のはての一つなり
けはしく白く稜立てるもの

稜立てる七つ森のそのはてのもの
めぐりおはりて汽笛ふえを鳴らせり



(下書稿1推敲前)

橋場線七つ森下を過ぐ

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし

鶯宿はこの月の夜を雪ふるらし
黒雲そこにてたゞものものし

七つ森の雪にうづみしひとつなり
けむりの下をひらけくるもの

月の下なる七つ森のそのひとつなり
かすかに雪の皺たゝむもの

月をうけし七つ森のはてのひとつなり
さびしき谷をうちいだくもの

月の下なる七つ森のその三つなり
小松まばらに雪を着るもの

月の下なる七つ森のその二つなり
オリオンと白き雲とをいたゞけるもの

七つ森の二つがなかのひとつなり
鉱石かねなど堀りしあとのあるもの。

月の下なる七つ森のはての一つなり
雪に白々と裾を引くもの

月の下なる七つ森のその三つなり
白々として起伏するもの

七つ森の三つがなかの一つなり
貝のぼたんをあまた噴くもの

月のあかりの七つ森のはての一つなり
けはしく白く稜立てるもの

稜立てる七つ森のそのはてのもの
めぐりおはりて汽笛ふえふけり