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文語詩100/56

岩手山巓

外輪山の夜明け方、 息吹きも白み競ひたち、

三十三の石神に、  よねを注ぎて奔り行く。


雲のわだつみ洞なして、 青野うるうる川湧けば、

あなや春日のおん帯と、 もろびと立ちてをろがみぬ。



(下書稿2推敲後最終段階)

外輪山の夜明けがた
息吹きも白み競ひたち
三十三の石神に
米を注ぎて奔り行く

雲のわだつみ洞なして
青野うるうる川湧けば
あなや春日のおん帯と
もろびと立ちてをろがみぬ

たゞれて赤き巌の臓
くろぐろ劃る焼けの峯



(下書稿2推敲後第二段階)

外輪山の夜明けがた
風はみそらに高くして
雲は東にうつるころ

たゞれて赤き巌の臓
くろぐろ劃る焼けの峯

外輪山の夜明けがた
合羽をよろふ一群の
三十三の石神に
米を注ぎて走り行く

ときしも雲のわだつみに
うるうる青き穴あきて
しらしらとかゞやけば
もろびとはたとおろがみぬ



(下書稿2推敲後第一段階)

外輪山の夜明けがた
合羽をよろふ一群は
三十三の石神に
米を注ぎて走り行く

たゞれて赤き巌の臓
くろぐろ劃る焼けの峯
ひかりさびしき雲海は
東にうつりそめにけり



(下書稿2推敲前)

三十三の石神に
米を注ぎておろがみつ
互に競ひめぐり行く
外輪山の夜明けがた



(下書稿1推敲後)

火口丘頂

火口丘なだらに盛りて
風すでに額に高きを
岩壁の反射を浴びて
なが横頬何ぞさびしき

師はいまだいたゞきにして
をちこちを指し示し
一群ははやくもかしこ
火口原歌ひ行く進めり

駒草は焼砂に咲き
うすれ日のしづに降るなか
残りたる雪をふみつゝ
何をかもなが寂しめる

つかれたるおももちのうち
よき家のよきならひして
ながわれをいたはり問へり
なほなれのかすかにわらふ



(下書稿1推敲前)

風すでにこゝに萎えしを
岩壁の反射を浴びて
なが横頬何ぞさびしき

昨日はかの青き林を
高らかにうたひしなれの
今朝赤き炬火をさゝげて
なれとみにうちもだしにき

駒草は焼砂に咲き
ひとびとは高く叫べど
残りたる雪をふみつゝ
何をかもなが寂しめる

つかれたるおももちのうち
よき家のよきならひして
ながわれをいたはり問へば
あゝなれのなにとすべけん