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文語詩100/52

〔水楢松にまじらふは〕

「水楢松にまじらふは、   クロスワードのすがたかな。」
誰かやさしくもの云ひて、  いらへはなくて風吹けり。

「かしこに立てる楢の木は、 片枝青くしげりして、
パンの神にもふさはしき。」 声いらだちてさらに云ふ。

「かのパスを見よ葉桜の、  列は氷雲に浮きいでて、
なが師も説かん順列を、   緑の毬に示したり。」

しばしむなしく風ふきて、  声はさびしく吐息しぬ。
「こたび県の負債せる、   われがとがにはあらざるを。」



(下書稿2推敲後)

銀行家とその子

「かしこに立てる楢の木は
片枝青くしげりして
パンの神にもふさはしき」
声いらだちてやゝに云ふ

「水楢松にまじはりて
クロスワードのすがたかな」
誰かやさしくもの云ひつ
えらひはなくて風吹けり

「かのパスを見よ葉桜の
つらは氷雲に浮きいでて
なが師も説かん順列を
緑の毬に示したり」

しばしむなしく風ふきて
声はさびしく吐息しぬ
「こたびあがた負債おひめせる
われがとがにはあらざるを」



(下書稿2推敲前)

銀行家とその子

「かしこに立てる楢の木は
片枝青くしげりして
パンの神にもふさはしき」
なだむるさまに誰か云ふ

「柏(?)松にまじはれば
クロスワードのすがたなり」
その声やゝにいらだてど
えらひはなくて風吹けり

「かのパスを見よ葉桜の
れつは氷雲につらなりて
なが師も説かん順列を
緑の毬に示したり」

しばしむなしく風ふきて
声はさびしく吐息しぬ
「こたびあがた負債おひめせる
われがとがにはあらざるを」



(下書稿1推敲後)

父と子

「かしこに立てる楢の木は
片枝青くしげりして
パンの神にもふさはしき。」
なだむるさまに誰か云ふ

「柏も松にまじはれば
クロスワードのすがたなり」
その声やゝにえらだてど
えらひはなくて風吹けり

「かのパスを見よ葉桜の
れつは氷雲につらなりて
なが師も説かん順列を
緑の毬に示したり

「こたびあがた負債おひめせる
われがとがにはあらざるを」
しばしむなしく風ふきて
声はさびしくといきしぬ



(下書稿1推敲前)

黒き燕尾の胸高く
略綬の銀をかゝげつゝ
商主その子とつれだちて
丘の高みに立ちしとき
積雲焦げて盛りあがり
油緑の桑もひかりたりけり

「かしこに立てる楢の子は
片枝青くしげりして
そのたゝずまゐ異なるは
パンの神にもふさはしし。」
商主は声を清くして

  かしらを青くそりこぼち
  白き袍などつけにたる
  その子善主にかたりけり
  子はえらひせずそらを見ぬ

「かしこを見ずや新緑の
柏は松にまじはりて
古きことばのモザイクや
クロスワードのさまなせり
かくのごときを清六は
混かう林となづけしか。」

  商主ほゝえむけしきにて
  ましろき指をあげたれど
  その子はさらに悦ばずふたゝび天を仰ぎける

「かのパスを見よ葉桜の
れつは氷雲につらなりて
なが師も説かん順列を
緑の毬に示したり
そのうるはしき丘丘も
やがてなんぢにうちまかすべし」

  商主かすかにいらだてば
  燕尾は風にりと鳴りぬ

「すでになんぢに与ふべき
丘と盛りとのつらなりは
億のアールを越えたれど
なんぢは百に倍し得ん」

  商主しきりに子を説けど
  青きかしらをそりこぼち
  麻の袍などつけにたる
  その子憂吹くけしきにて
  むしろなみだをふくめるごとし