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文語詩100/50

峡野早春

夜見来よみこの川のくらくして、 斑雪はだれしづかにけむりだつ。

二すぢ白き日のひかり、  ややになまめく笹のいろ。

稔らぬなげきいまさらに、 春をのぞみて深めるを。

雲はまばゆき墨と銀、   波羅蜜山の松を越す。



(下書稿2)

峡野早春

夜見来よみこの川のくらくして
斑雪はだれしづかにけむりだつ
二すぢ白き日のひかり
ややになまめく笹のいろ
雲はまばゆき墨と銀
波羅蜜山の松を越す



(下書稿1推敲後)

大野は斑雪はだれけむりだつち
夜見来の川こそしづかなれ

雲淫らなる尾をひきて
波羅蜜山の松越せば
峡野はくらき中彼岸
二すじ白き光棒の
やゝになまめく笹のいろ

大野はけむりや白磁の雪や
黝むり滑べる夜見来川



(下書稿1推敲前)

大野は斑雪うすけぶり
夜見来の川の音もなき

雲淫らなる尾をひきて
波羅蜜山の松を越え
峡野はくらき中彼岸
二すじ白き光棒の
やゝになまめく笹のいろ

大野はけむりや白磁の雪や
黝むり滑べる夜見来川



(先駆形口語詩「一〇一四 春」)

一〇一四

一九二七、三、二三、

野原は残りのまだらな雪と
黝ぶり滑べる夜見来川

雲が淫らな尾を引いて
青々沈む波羅密山の
松のあたまをかすめて越せば
山の向ふは濁ってくらく
二すじしろい光の棒と
わづかになまめく笹のいろ

野原はまだらな磁製の雪と
湿んで滑べる夜見来川