目次へ  縦書き

文語詩100/49

軍事連鎖劇

キネオラマ、寒天光のたゞなかに、ぴたと煙草をなげうちし、
上等兵の袖の上、また背景のあけぞらを、雲どしどしと飛びにけり。

そのとき角のせんたくや、まつたくもつて泪をながし、
やがてほそぼそなみだかわき、すがめひからせ、トンビのえりを直したりけり。



(定稿推敲前)

連鎖劇

キネオラマ、寒天光のそがゆゑに、ぴたと煙草をなげうちし、
上等兵の袖の上、また背景の紺の上を、雲どしどしと飛びにけり。

そのとき角のせんたくや、まったくもって泪をながし、
やがてほそぼそなみだかわき、すがめひからせ、トンビのえりを直したりけり。



(下書稿2)

連鎖劇

そのとき角のせんたくや
まったくもって泪をながし
やがてほそぼそなみだかわき
すがめひからせ
トンビのえりを直したりけり



(下書稿1「冬のスケッチ」第4葉第4章、第5葉第4章)

   ※

せんたくや、
そのときまったく泪をながし
やがてほそぼそ泪かわき
すがめひからせ
インパネスのえりをなほせり。

(第4葉第4章)

   ※

 

あけがたを
雲がせはしくながれて行き
上等兵は
たばこの火をぴたりと地面になげすてる。

(第5葉第4章)



(関連稿「冬のスケッチ」第5葉第2章、5章)

  ※

あたかもそのころ
キネオラマに支度とて
紫の燐光らしきもの
横に舞台をよぎりたり

(第5葉第2章)

  ※

劇場のやぶれしガラス窓に
するどくも磨かれ、むらさきの身を光らしめ
西のみかづき歪みかゝれり。

(第5葉第5章)