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文語詩100/46

病技師〔一〕

こよひのやみはあたたかし、 風のなかにてなかんなど、

ステッキひけりにせものの、 黒のステッキまたひけり。


蝕む胸をまぎらひて、    こぼと鳴り行く水のはた、

くらき炭素のに照りて、 飢饉けかつ供養の巨石おほいしめり。



(定稿推敲前)

病技師

こよひの闇はあたたかし、 風のなかにてなかんとぞ、

二重のマント厳めしく、   にせのステッキつきいでぬ。


蝕む胸をまぎらひて、    こぼと鳴り行く水のはた、

くらき炭素のに照りて、 飢饉けかつ供養の巨石おほいしめり。



(下書稿6推敲後)

病技師

こよひの闇はあたたかし
風のなかにてなかんとぞ
ステッキひかり銀かしら
黒のステッキまたひけり

蝕む胸をまぎらひて
こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の巨石おゝいし
カーボン二燭春めきぬ



(下書稿6推敲前)

病技師

こよひの闇はあたたかし
風のなかにてなかんとぞ
ステッキふれりにせものの
黒のステッキまたふれり

蝕む胸をまぎらひて
こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の巨石おゝいし
くらくともれる二燭の電燈



(下書稿5推敲後)

病技師

こよひの闇はあたたかし
風のなかにて泣かんとぞ
蝕む胸を立ちいづる

闇と風とのなかにして
ステッキひかるにせものの
黒のステッキまたひかる

こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の巨石いしの上に
円くともれる二燭の電燈



(下書稿5推敲前)

病技師

こよひの闇はあたたかし
風のなかにて泣かんなど
蝕む胸を立ちいづる

闇と風とのなかにして
ステッキひかるにせものの
黒のステッキまたひかる

こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の石の上に
円くともれる二燭の電燈



(下書稿4推敲後)

亡友

こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の石の上に
あかくともれる二燭の電燈



(下書稿4推敲前)

こよひの闇はあたゝかし
風のなかにて泣かんなど
ひとステッキをとりこしに

こぼと鳴り行く水のはた
飢饉ケカツ供養の石の上に
あかくともれる二燭の電燈



(下書稿3推敲後)

風のなかにてステッキひかれり
かのにせものの黒のステッキ

……白きうつろにのびたちて
  いちじくゆるゝ天狗巣のよもぎ……

やまひやゝにふかくして
いよよにひとの身をやぶるらし



(下書稿3推敲前)

めまぐるきひかりのうつろ
のびたちて
いちじくぬるゝ天狗巣のよもぎ

風のなかにて
ステッキひかり
かのにせものの
黒のステッキ



(下書稿2推敲後)

風の中に 抛げんとていでたてるなり
こぼと鳴り行く水のはた
千人供養の
石にともるは
二燭の赤き炭素電燈


※下書稿2の後半部分は「〔ひかりものすとうなゐごが〕」の下書稿となる。

※下書稿2と下書稿3は「冬のスケッチ」4章を二分して文語詩化 を試みたものであるが、下書稿2の方は赤インクの線で二分されて いる。その前半の部分が、下書稿3の部分と結合されて、新しく、 下書稿4へ展開してゆく。



(下書稿2推敲前)

風の中を
なかんとていでたてるなり
千人供養の
石にともれる二燭の電燈

やみとかぜとのかなたにて
光りものとも見えにける
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし身を折りて
水あかりせる西天に
いとつゝましく歩み去る



(下書稿1・別稿)

眩ぐるき
ひかりのうつろ、
のびたちて
いちじくゆるゝ
天狗巣のよもぎ。



(下書稿1「冬のスケッチ」第13葉1〜3章推敲後)

  ※

風の中にて
ステッキ光れり
かのにせものの
黒のステッキ。

  ※

風の中を
なかんとていでたてるなり
千人供養の
石にともれる二燭電燈

  ※

やみとかぜとのかなたにて
なほさながらに
光りものとも見え
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし身を折りて歩みさる
西天なほも 水明り。

  ※



(下書稿1「冬のスケッチ」第13葉1〜3章推敲前)

  ※

風の中にて
ステッキ光れり
かのにせものの
黒のステッキ。

  ※

風の中を
なかんとていでたてるなり
千人供養の
石にともれるよるの電燈

  ※

やみとかぜとのなかにして
こなにまぶれし水車屋は
にはかにせきし歩みさる
西天なほも 水明り。

  ※