目次へ  縦書き

文語詩100/41

塔中秘事

雪ふかきまぐさのはたけ、 玉蜀黍きみ漂雪フキは奔りて、

丘裾の脱穀塔を、     ぼうぼうとひらめき被ふ。


歓喜天そらやよぎりし、  そが青きあめの窓より、

なにごとか女のわらひ、  栗鼠のごと軋りふるへる。



(定稿推敲前)

塔中秘事

雪ふかきまぐさのはたけ、 玉蜀黍キミ漂雪フキは奔りて、

丘裾の脱穀塔を、     ぼうぼうとひらめき被ふ。


歓喜天そらやよぎりし、  なめらけき窓ガラスより、

ひそかなる女のわらひ、  何ごとかりりと漏れくる。



(下書稿7推敲後)

雪ふかき まぐさのはたけ
きみばたけ 漂雪フキは奔りて
丘裾の   脱穀塔を
ぼうぼうと ひらめき被ふ

歓喜天   そらやよぎりし
なめらけき 窓の玻璃より
ひそかなる 女のわらひ
りりとして ふるひもれくる



(下書稿7推敲前)

雪ふかき まぐさのはたけ
きみばたけ 漂雪フキは奔りて
丘裾の   脱穀塔を
ぼうぼうと ひかりて被ふ

歓喜天   そらやよぎりし
なめらけき そのガラスより
なにごとか 女のわらひ
ひそやかに りりともれくる



(下書稿6推敲後)

巨なるプデングに似る
そのかみの博物館は
いま玉蜀黍の倉庫とかはりつ
ふゞきまたひかりて被へば

青ぞらの下歓喜天
なめらけきそのガラスより
なにごとかをんなのわらひ
りりとしてひそにもれくる



(下書稿6推敲前)

そのかみの博物館を
いま玉蜀黍の倉庫としたれば
ふゞきまたひかりて襲ふ

なめらけきガラス窓より
なにごとか女のわらひ
りりとしていましもれくる



(下書稿5推敲後)

三階に玻璃を装ひて
青ぞらに玉蜀黍を砕けば
ふゞきまたひかりて襲ひて
雪つ潮遠く寄せ来て

なめらけきガラス窓より
なにごとか(ここで中止)



(下書稿5推敲前)

三階に玻璃を装ひて
青ぞらに玉蜀黍を砕けり
ふゞきまたひかりて襲ふ
雪の潮遠く寄せ来て

なめらけきガラス窓より
なにごとかをんなのわ(ここで中止)



(下書稿4推敲後)

農場

玉蜀黍きみくだく三がいの玻璃
かゞやかにふゞきはおそふ
雪の潮遠く寄せ来て

なめらけき天の窓より
ひめわらひりりともれくる



(下書稿4推敲前)

農場

玉蜀黍きみくだく三階の玻璃
かゞやかにふゞきは襲ふ
雪の潮遠く寄せ来て

なめらけき天窓の辺に
秘めわらひりりともれくる



(下書稿3推敲後)

玉蜀黍きみくだく三階の玻璃
雪けぶりひかりて襲ふ

なにごとか女のわらひ
りすのごとひそかに軋る



(下書稿3推敲前)

まめぐらは三階の玻璃
雪けぶりひかりて襲ふ

なにごとか女のこゑの
りすのごとしばし軋れる



(下書稿2)

修弥しゆみおもけふもかゞやき
はかなしや天の湯気むら

すがれたる玉蜀黍のはたけは
こもごもに雪けむりせり



(下書稿1推敲後)

藍銅鉱アズライト 今日もかゞやき
はかなしや天の湯気むら

そのかみの博物館を
いま大豆の倉庫としたれば
三階に玻璃を装へる
そのすがたまたたぐひなし

日ぞ雲をほのに出づれば
すがれたる玉蜀黍のはたけに
さとばかり立つ雪けむり
かの大豆の倉庫の二階、
なめらけきガラス窓より
何事か女の声の
栗鼠のごとわらひ軋れる



(下書稿1推敲前)

藍銅鉱アズライト 今日もかゞやき
はかなしや天の湯気むら

これはこれ岩崎と呼ぶ
大ブルジョアの農場なれば
大豆倉庫は三階にして
ガラス窓さへたゞならず

太陽雲を出でぬれば
せはしき雪の反射あり
そのなめらけきガラス窓より
栗鼠の声してわらひもれくる