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文語詩100/29

早春

黒雲峡を乱れ飛び  技師ら亜炭の火に寄りぬ

げにもひとびと崇むるは  青きGossan銅の脈

わが索むるはまことのことば

雨の中なる真言なり



(習字稿)

まことひとびと
   崇むるは

青き gossan
   銅の脈

わが求むるは

   まことの
   まことの

    ことば
    ことば

雨の中なる

  真言なり
  真言なり



(下書稿4推敲後)

黒雲峡を乱れとび
技師ら亜炭の火に寄りぬ

げにもひとびとあがむるは
青きGossan銅の脉
わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿4推敲前)

黒雲峡を乱れとび
人人亜炭の火に寄りぬ

わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿3推敲後)

雪うちとざすさが巌にもあらず
黒雲ちぎれ撃つにもあらず
わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なれ



(下書稿3推敲前)

雪とざすさが山ならず
風ならずみぞれにあらず、
ちぎれ飛ぶ黒雲ならぬ
はた褐炭の赤き火ならず
わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿2推敲後)

風とみぞれにちぎれとぶ
かの黒雲を越え来れば
この山峡の停車場に
毛布まとへる村人の
褐の炭燃す炉によりて
うれふるさまにもだしたり
げに大理石の峯よりも
わがもとめしはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿2推敲前)

わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり
風とみぞれにちぎれとぶ
かの黒雲のなかを来て
この山峡の停車場の
小き扉を排すれば
毛布まとへる村人の
褐の炭燃す炉によれり
げに大理石の脉よりも
いやにうくほりのぞみつゝ
わがもとめしはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿1推敲後)「冬のスケッチ第12葉第3章」

わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり
風とみぞれにちぎれとぶ
かの黒雲のなかを来て
この山峡の停車場の小き扉を排すれば
毛布まとへる村人の
褐の炭燃す炉によれり
げに大理石のそれよりも
いよよに望みうち慾りて
わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり



(下書稿1推敲前)「冬のスケッチ第12葉第3章」

わがもとむるはまことのことば
雨の中なる真言なり
あめにぬれ 停車場の扉をひらきしに
風またしとゞ吹き出でて
雲さへちぎりおとされぬ。