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文語詩100/26

〔かれ草の雪とけたれば〕


かれ草の雪とけたれば
裾野はゆめのごとくなり
みぢかきマント肩はねて
濁酒をさぐる税務吏や
はた兄弟の馬喰の
鶯いろによそほへる
さては「陰気の狼」と
あだなをもてる三百も
みな恍惚とのぞみゐる



(下書稿3)(断片)

かれ草の雪とけたれば、裾野は夢のごとくなり、みぢかき
 マント肩はねて
濁酒をさぐる税務吏や はた兄弟の馬喰の



(下書稿2推敲後)

人民の敵

かれ草の雪とけたれば
裾野はゆめのごとくなり
みぢかきマント肩はねて
濁酒をさぐる税務吏や
はた兄弟の馬喰の
鶯いろによそほへる
さては「陰気の狼」と
あだなをもてる三百も
みな恍惚とのぞみゐる



(下書稿2推敲前)

早春

かれ草の雪とけたれば
裾野は海のごとくなり
みぢかきマント肩はねて
濁酒をさぐる税務吏や
はた兄弟の馬喰の
鶯いろによそほへる
さては「陰気の狼」と
あだなをもてる三百も
みな恍惚とのぞみゐる



(下書稿1)(冬のスケッチ第28葉、29葉)

     ※

気圏かそけき霧のつぶを含みて
東京の二月のごとく見ゆるなり
腐植質のぬかるみを
あゆみよりしとき
停車場のガラス窓にて
わらひしものあり
又みぢかきマント着て
税務属も入り来りけり。

     ※

兄弟の馬喰にして
一人はこげ茶
一人は朝のうぐいすいろにいでたてり
ひげをひねりてかたりたり。