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文語詩100/21

旱倹

雲の鎖やむら立ちや、    森はた森のしろけむり、

鳥はさながら禍津日を、   はなるとばかり群れ去りぬ。


野を野のかぎり旱割れ田の、 白き空穂のなかにして、

術をもしらに家長たち、   むなしく風をみまもりぬ。



(下書稿2)

旱倹

雲の鎖やむら立ちや
森はた森のしろけむり
鳥はさながら禍津日を
はなるとばかり群れ去りぬ

野を野のかぎり旱割れ田の
白き空穂のなかにして
すべをもしらに家長たち
むなしく風をみまもりぬ



(下書稿1)

雲の鎖やむら立ちや
はた森森のしろけむり
さもまがつみをはなるゝと
鳥は南へ渡るなれ

まなこのきはみ水無し田の
白き空穂のなかにして
翁瞳をうつろにして
かなしく風を見まもりぬ



(先駆形口語詩「昏い秋」)

三一一

昏い秋

一九二四、一〇、四、

黒塚森の一群が
風の向ふにけむりを吐けば
そんなにつめたい白い火むらは
北いっぱいに飛んでゐる
  ……野はらのひわれも火を噴きさう……
雲の鎖やむら立ちや
白いうつぼの稲田にたって
ひとは幽霊写真のやうに
ぼんやりとして風を見送る