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文語詩100/2

岩手公園

「かなた」と老いしタピングは、 杖をはるかにゆびさせど、
東はるかに散乱の、       さびしき銀は声もなし。


なみなす丘はぼうぼうと、    青きりんごの色に暮れ、
大学生のタピングは、      口笛軽く吹きにけり。


老いたるミセスタッピング、   「去年こぞなが姉はこゝにして、
中学生の一組に、        花のことばを教へしか。」


弧光燈アークライトにめくるめき、      羽虫の群のあつまりつ、
川と銀行木のみどり、      まちはしづかにたそがるゝ。



(下書稿3推敲後)

「かなた」と老いしタピングは
杖をはるかにゆびさせど
東はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

大学生のタピングは
口笛軽く吹きにけり

老いたるミセスタッピング
「去年なが姉はこゝにして
中学生の一組に
花の名をこそをしへしか」

弧光燈アークライトにめくるめき
羽虫の群のあつまりつ
川と銀行木のみどり
まちはしづかにたそがるゝ



(下書稿3推敲前)

弧光燈アークライトは燃えそめて
羽虫もはやく群たれど
東はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

なみなす丘はぼうぼうと
青きりんごの色に暮れ
ひとりそばだつ高洞山たかばら
山火の痕をすぐろへり

まひるを経来し分析の
酸のけぶりに胸いたみ
わがしわぶけばあやしみて
ふりさけ見ゆく園つかさ

弧光燈アークライトにめくるめき
羽虫の群のあつまりつ
川と銀行木のみどり
まちはしづかにたそがるゝ



(習字稿 断片)

弧光燈アークライトは燃えそめて
羽虫もはやく群たれど



(下書稿2推敲後)

弧光燈アークライトは燃えそめて
羽虫もはやく群たれど
東はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

なみなす丘はぼうぼうと
青きりんごの色に暮れ
ひとりそばだつ高洞山たかばら
山火の痕ぞかぐろなる

まひるを経来し分析の
酸のけぶりに胸いたみ
わがしわぶけばあやしみて
ふりさけ見往く園つかさ

アークライトにめくるめき
羽虫の群のあつまりつ
川と銀行木のみどり
まちはしづかにたそがるゝ



(下書稿2推敲前)

弧光燈アークライトは燃えそめて
羽虫もはやく群たれど
東はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

なみなす丘のつらなりは
青きりんごの色に暮れ
ひとりそばだつ高洞山たかばら
山火の痕ぞかぐろなる

まひるは青き瓦斯の火や
酸のけぶりに胸いたみ
ゆふべはこゝに商量の
むなしき日数つもりしか

アークライトにめくるめき
羽虫の群のあつまりつ
川と銀行木のみどり
まちはしづかにたそがるゝ



(下書稿1推敲後)

弧光燈アークライトは燃えそめて
羽虫もはやく群たれど
東はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

まひるを青き瓦斯の火や
酸のけぶりに胸いたみ
ゆふべはこゝにして
風にむなしき日数かな

なみなす丘ははるばると
青きりんごの色に暮れ
ひとりそばだつ高洞山たかばら
山火の痕ぞかぐろなる

アークライトにめくるめき
羽虫の群のあつまりつ
川と銀行木のみどり
町はしづかにたそがるる



(下書稿1推敲前)

弧光燈アークライトに灯は下りて
しらしらしらと苛だてど
南はるかに散乱の
さびしき銀は声もなし

   白堊いろなる物産館は
   つゝましく黄にかゞやきてあり

起伏の丘はゆるやかに
青きりんごの色に暮れ
高洞山の焼け痕は
蓴菜にこそ似たりけり

   小学校の窓ガラス
   窓きれぎれに薄明の
   黄ばらを浮べて夜に入り行く