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文語詩100/17

〔遠く琥珀のいろなして〕

遠く琥珀のいろなして、  春べと見えしこの原は、

枯草くさをひたして雪げ水、  さゞめきしげく奔るなり。


峯には青き雪けむり、   裾は柏の赤ばやし、

雪げの水はきらめきて、  たゞひたすらにまろぶなり。



(定稿推敲前)

遠く枯艸かゞやきて、  春べと見えしこの原を、

なだらのかぎり雪げ水、  たゞさゞめきて奔るなり。


峯には青き雪けむり、   裾は柏の赤ばやし、

雪げの水はきらめきて、  たゞひたすらにまろぶなり。



(下書稿4)

遠く枯艸 かゞやきて
春べとみえし この原は
なだらのかぎり 雪げ水
たゞさゞめきて 奔るなり

峯には青き 雪けむり
裾は柏の 枯ばやし
雪げの水は きらめきて
たゞひたすらに まろぶなり



(下書稿3推敲後)

遠く枯草かゞやきて
春べとみえしこの原は
めじをかぎりに雪げ水
たゞさゞめきて奔るなり

峯には青き雪けむり
裾は柏のかれ林
雪げの水はかがやきて
たゞひたすらにまろぶなり



(下書稿3推敲前)

遠く枯草かゞやきて
春べとみえしこの原は
泉をまがふ雪げ水
たゞさゞめきて奔るなり

山には青き山けむり
天はひそまる瑠璃の椀
白樺たてるこの原の
あやしき沼をなせりなり



(下書稿2推敲後)

遠く枯草かゞやきて
春べと見えしこのはらは
泉をまがふ雪げ水
たゞさゞめきて奔るなれ
には青き山けむり
天はひそまる瑠璃の椀
白樺たてるこの原は
あやしき沼のすがたなり



(下書稿2推敲前)

遠く春べと見えにつゝ
草かゞよへるこのはらは
玉をあざむく雪げ水
たゞいちめんに鳴りわたる
雪げの水のさゞめきて
まなじのかぎり雪げ水
うちさゞめきて奔るなり
山には青き山けむり
そらはひそまる瑠璃の板
白樺たてるこの原は
さあれわたらんすべもなき



(下書稿1推敲後)

標本採集者

あな期せざりし山裾の
白樺たてるこの原は
雪融の水ぞいちめんに
枯れ草をこそ浸したれ
さあれ光にさゞめきて
玉とあざむく水なれば
ながれひねもすよもすがら
はがねの針に綴りたる
青くつ下もぬらしつゝ
かの三つ森にわたり行き
凍りて岩の砕かれし
よき標本を求めなん



(下書稿1推敲前)

白樺たてるこの原の
偏光のなかをながれたる
雪融の清き水なれば
ながれひねもすよもすがら
はがねの針に綴りたる
青くつ下ぬらしつゝ
かの三つ森にわたり行きなん