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文語詩50/5

〔暁〕

さきは夜を截るほとゝぎす、 やがてはそらの菫いろ、
 
小鳥の群をさきだてゝ、   かくこう樹々をどよもしぬ。
 
 
醒めたるまゝを封介の、   憤りほのかに立ちいでて、
 
けじろき水のちりあくた、  もだして馬の指竿とりぬ。


(下書稿二推敲後)

さきは
夜を截る
   ほととぎす
やがてそらの菫いろ
小鳥の群をさきだてゝ
かくこうどよみわたすなり
醒めたるまゝを
     封介の
面も洗はず憤りほのかに
     立ちいでゝ
けじろき水の
    のちりあくた
もだして馬の
指竿とりぬ


(下書稿二推敲前)

はじめは
夜を截る
   ほととぎす
やがては東の菫いろ
声さだまらぬ小鳥むら
つひにはどよもすかくこ鳥
憤りて醒めし
     封介は
面も洗はず
     声もなく
けじろき水に
    ふみ入りけて
もだして馬の 指竿をとる


(下書稿一)(下の口語詩原稿に一部文語化を試みている)

はじめは沼のほととぎす
そらに菫の色ありて
かくこうどよみ


(先駆形口語詩)

〔鳴いてゐるのはほととぎす〕

      鳴いてゐるのはほととぎす
 …………to-te-to-to
 to-te-te-to-te-to-to ti-ti-ti-ti-ti-ti
ぐっしょりの寝汗だ
手拭を置くとよかった
    ti-ti-ti またやりだした
 to-te-te-to-te-to-to
 to-te-te-to-te-to-to ti-ti-ti-ti-ti-ti
川ばたよりはいくらか近い
三目月沼の上らしい
落ちるやうに飛んだり
斜に載ったりしてゐるらしい
三時十分だ
そらにかすかな菫のいろがうかぶころだ
鳥はもう鳴かない
まもなく崖にかくこうが来てなきだすころだ
それが互ひに呼んだり答へたり
一つが一つの反響のやうにきこえたり
にぎやかになれぱ
こんどは小さな鳥どもが
はじめは調子も何もなく
たゞ点々になきはじめる
そのころそらはもうしろく
となりでは
ぶりぶり憤りながら佐吉が起きる
起きるとそのまゝ顔も洗はず
今日の田植えの場所へ行って
ごみのうかんだつめたい水へはいり
だまって馬の指竿をとる
そのころまでは
まだ四五十分
もういちどねむらう