目次へ  縦書き

文語詩50/48

残丘モナドノックの雪の上に〕

残丘モナドノックの雪の上に、      二すじうかぶ雲ありて、

誰かは知らねサラアなる、  ひとのおもひをうつしたる。


信をだになほ装へる、     よりよき生へのこのねがひを、

なにとてきみはさとり得ぬと、 しばしうらみて消えにけり。



(下書稿推敲後)

モナドノックの雪の上に、
二すじうかぶ雲ありて、
誰かは知らねサラアなる、
ひとのおもひをうつしたり

信をだに装へる
よりよき生へのこのねがひを
なにとてきみはさとり得ぬと
しばしうらみて消えにけり



(下書稿推敲前)

モナドノックの雪の上に、
二すじうるむ雲ありて、
誰かは知らねサラアなる、
ひとのおもひをうつしたり

信をだになほ装へる
よりよき生のこのねがひを
なにとてきみはさとり得ぬと
やゝにうらみて消えにけり



(先駆形口語詩2「雲」)

青じろい天椀のこっちに
まっしろに雪をかぶって
早池峰山がたってゐる
白くうるんだ二すじの雲が
そのいたゞきを擦めてゐる
雲はぼんやりふしぎなものをうつしてゐる
誰かサラーに属する女ひとが
いまあの雲を見てゐるのだ
それは北西の野原のなかのひとところから
信仰と譎詐とのふしぎなモザイクになって
白くその雲にうつってゐる
 (いましがわれをみるごとく
  そのひといましわれをみる
  みなるまことはさとれども
  みのたくらみはしりがたし)
  ……さう
    信仰と譎詐との混合体が
    時に白玉を擬ひ得る
    その混合体はたゞ
    よりよい生活くらしを考へる……
信仰とさへ想はねばならぬ
よりよい生のこのねがひを
どうしてひとは悟らないかと
をはりにぼんやりうらみながら
雲のおもひは消えうせる
うすくにごった葱いろの水が
けむりのなかをながれてゐる



(先駆形口語詩1「〔うすく濁った浅葱の水が〕」)

一〇三九

〔うすく濁った浅葱の水が〕

一九二七、四、一八、

うすく濁った浅葱の水が
けむりのなかをながれてゐる
早池峰は四月にはいってから
二度雪が消えて二度雪が降り
いまあはあはと土耳古玉タキスのそらにうかんでゐる
そのいたゞきに
二すじ翔ける
うるんだ雲のかたまりに
基督教徒だといふあの女の
サラーに属する女ひとたちの
なにかふしぎなかんがへが
ぼんやりとしてうつってゐる
それは信仰と奸詐との
ふしぎな複合体とも見え
まことにそれは
山の啓示とも見え
畢竟かくれてゐたこっちの感じを
その雲をたよりに読むのである