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文語詩50/40

驟雨

驟雨そゝげば新墾にいはりの、   まづ立ちこむるつちけむり。

湯気のぬるきに人たちて、 故なく憤る身は暗し。

すでに野ばらの根を浄み、 蟻はその巣をめぐるころ。

杉には水の幡かゝり、   しぶきほのかに拡ごりぬ。



(定稿推敲前)

驟雨

驟雨そゝげば新墾にいはりの、   いっさんあぐるつちけむり。

湯気のぬるきに人たちて、 故なく憤る身は暗し。

ちぎれし草と野ばらの根、 その巣をめぐる蟻の群。

杉には水の幡かゝり、   しぶきほのかに拡ごりぬ。



(下書稿推敲後)

驟雨かだちそゝげば新墾の
すなはちあぐるつちけむり

湯気のぬるきに人たちて
故なく怒る身は暗し

ちぎれし草と野ばらの根
その巣をめぐる蟻の群

杉には水の幡かゝり
しぶきほのかにあがるなり



(下書稿推敲前)

驟雨かだちにわかに落ちくれば
そのけむりのあがるなり

あゝもうと立つ湯気のなか
われはひとりと怒るなり

ちぎれし草と野ばらの根
蟻はその巣をめぐるなり

杉は流れの幡かけて
しぶきほのかにあぐるなり



(先駆形口語詩「〔驟雨はそそぎ〕」)

七二八

〔驟雨はそそぎ〕

一九二六、七、一五、

驟雨カダチはそそぎ
土のけむりはいっさんにあがる
  あゝもうもうと立つ湯気のなかに
  わたくしはひとり仕事を忿る
    ……枯れた羊歯の葉
      野ばらの根
      壊れて散ったその塔を
      いまいそがしくめぐる蟻……
杉は驟雨のながれを懸け
またほの白いしぶきをあげる