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文語詩50/35

〔川しろじろとまじはりて〕

川しろじろとまじはりて、  うたかたしげきこのほとり、
病きつかれわが行けば、   そらのひかりぞ身を責むる。


宿世のくるみはんの毬、   干割れて青き泥岩に、
はかなきかなやわが影の、  卑しき鬼をうつすなり。


蒼茫として夏の風、     草のみどりをひるがへし、
ちらばる蘆のひら吹きて、  あやしき文字を織りなしぬ。


生きんに生きず死になんに、 得こそ死なれぬわが影を、
うら濁る水はてしなく、   ささやきしげく洗ふなり。



(下書稿2推敲後)

川しろじろとまじはりて
うたかたしげきこのほとり
病きつかれわが行けば
そらのひかりのたゞけはし

宿世のくるみはんの毬
干割れて青き泥岩に
はかなきかなやわが影の
卑しき鬼をうつすなり

蒼茫として夏の風
草のみどりをひるがへし
ちらばる蘆のひら吹きて
あやしき文字を織りなしぬ

生きんに生きず死になんに
得こそ死なれぬわが影を
うら濁る水はてしなく
さゝやきしげく洗ふなり



(下書稿2推敲前)

川しろじろとまじはりて
うたかたしげきこのほとり
われは卑しき鬼となり
きみはを──を──ぬ
磐に干割れ

病きつかれわが行けば
卑しき鬼のひがたかな
そらのひかりのけはしけれ

青じろひわれ
ちらばる蘆

泥岩青くひゞいりて
尖れるくるみ埋めしを
干割れて青木泥岩に
はかなきかなやわが影の
卑しき鬼のすがたかな

蒼茫として夏の風
草のみどりをひるがへし
うら濁る水はてしなく
きみがすくよの影を濯ふ
さゝやきながら洗ふなり

うら濁る磐に落ちて
あゝきみの影すくよかに
こゝはも修羅の渚なり

ちらばる蘆のひら吹きて
あやしき文字を織りなしぬ

生きんに生きず死になんに
得こそ死なれぬわが影を



(下書稿1推敲後)

風うち吹きて、
ちらばる蘆や、
波わが影をうち濯ふ、

川しろじろと、
峡より入りて、
二水はならびながれたり、

風蒼茫と、
草緑を吹き、
あてなく投ぐるわが眼路や、
きみ来ることの
よもなきを知り
なほうち惑ふこゝろかな

尖れるくるみ、
巨獣のあの痕、
磐うちわたるわが影を、

濁りの水の
かすかに濯ふ
たしかにこゝは修羅の渚



(下書稿1推敲前)

泥岩遠き
むかしのなぎさ
いま水増せる川岸に、
風うち吹きて、
ちらばる蘆や、
波わが影をうち濯ふ、

蛇紋の峯は、
かしこに黒く、
孤高はかなくほこれども、
川しろじろと、
峡より入りて、
二つの水はまじはらず、

風蒼茫と、
草緑を吹き、
あてなく投ぐるわが眼路に、
きみ待つことの
むなしさを知りて
なほわが瞳のうち惑ふ

尖れるくるみ、
巨獣のあの痕、
磐うちわたるわが影を、
濁りの水の
かすかに濯ふ
たしかにこゝは修羅の渚