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文語詩50/3

〔雪うづまきて日は温き〕

雪うづまきて日は温き、 萱のなかなる荼毘壇に、

県議院殿大居士の、   柩はしづとおろされぬ。


紫綾の大法衣、     逆光線に流れしめ、

六道いまは分かるらん、 あるじの徳を讃へけり。


(下書稿)

荼毘

雪うづまきて日は温き
萱のなかなる荼毘壇に
県議院殿大居士の
柩はかくておろされぬ

紫綾の 大法衣
逆光線に流れしめ
まこと小さき握り鐘
ひじりはちりと叩きけり


(新校本全集第7巻校異より)

 本稿の第一形態は、無罫詩稿用紙一枚の裏に,ブルーブラックイ ンクで書かれたもの。この用紙には両面つづきで、口語詩「〔めづ らしがって集ってくる〕」が鉛筆で記されている。そして紙葉の右 上の一部(面積にして全紙面の約6分の1)は破棄されている。

 その紙葉の裏面上半の口語詩をブルーブラックインクの斜線で消 した後、下部余白へ本稿が書き下ろされている。


(前駆形口語詩)

〔めづらしがって集ってくる〕

(冒頭一、二行不明)

 

(十数字不明)ちで

 

(約二行不明)

 

(十数字不明)めづらしがって集ってくる

 

(一、二行不明)

 

ひらりと二重マントを脱げば
尻はしおったる黒綿入と
メリヤス白の股引に
ゴム長靴のおんいでたち
さてもあなたは玄関で
斜めにしょった風呂敷をおろし
裾もおろしてまづ一応のご挨拶
拙者もこっちで伺へば
その声けだし凜として
何か拙者もいゝ心地
あなたが風呂敷包みをといて
紫朱珍(だか何だか)の大法衣をばつまみ上げ
逆光線のまったゞ中に
さっとまばゆく着たまへば
更にひかって吹雪は過ぎ
紫いろの衣の袖は
匂ふすみれの花の滝
集まってくるこどもらは
鼻をたらしたり
髪をばしゃばしゃしながら
何か立派な極楽鳥でも見るふうなので
じつに訓導が制すれども制すれどもきかず
あつかひ兼ねてゐるひまに
あなたは早くも風呂敷をたゝみ
壁にかかった二重マントのかくしに入れ
やゝ快活に床をふみ
おももちむしろ颯爽として
丹田に力を加へ
職員室に来られます
そこで拙者も立ちあがれば
あなたは禅機 横眼のひかり
やっと一声気合もかけまじきけはひ
いのししのやうな髪毛した
(数字分不明)は

(以下不明)