目次へ  縦書き

文語詩50/29

〔水霜繁く霧たちて〕

水霜繁く霧たちて、 すすきはそほぢ幾そたび、
馬はこむらをふるはしぬ。

(荷縄を投げよはや荷縄)


雉子鳴くなりその雉子、 人なき家の暁を、
歩み漁りて叫ぶらし。



(下書稿推敲後)

水霜繁く霧たちて
すゝきはそほぢ幾そたび
馬はこむらをふるはしぬ

 縄を投げよ!

(荷縄を投げよ はや荷縄)
熊野の森を行くころは
雲ののろしものぼらんを
雉子きぎす鳴くなりその雉子
人なき家の暁を
歩み漁りて叫ぶらし



(下書稿推敲前)

水霜繁く霧たちて
すゝきはそぼち幾そたび
馬はこぶらをふるはしぬ

 縄を投げよ!

(荷縄を投げよ その荷縄)
雲ののろしの昇るころ
ひかりを浴みて帰らんを
雉子きぎすぞ鳴くなるその雉子
人なき家の暁を
歩み漁りて叫ぶらし



(先駆形口語詩「七三九〔霧がひどくて手が凍えるな」)

七三九
     〔霧がひどくて手が凍えるな〕
                    一九二六、九、一三、

霧がひどくて手が凍えるな
 ……馬もぶるっとももをさせる……
縄をなげてくれ縄を
 ……すすきの穂も水霜でぐっしょり
   あゝはやく日が照るといゝ……
雉子が啼いている 雉子が
おまへの家のなからしい
 ……誰も居なくなった家のなかを
   餌を漁って大股にあるきながら
   雉子が叫んでゐるのだらうか……