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文語詩50/24

〔夜をま青き藺むしろに〕

夜をま青き藺むしろに、  ひとびとの影さゆらげば、

遠き山ばた谷のはた、   たばこのうねの想ひあり。


夏のうたげにはべる身の、 声をちゞれの髪をはぢ、

南かたぶく天の川、    ひとりたよりとすかし見る。



(下書稿4推敲後)

歌妓

夜をま青き藺むしろに
ひとびとの影さゆらげば
遠き山ばた谷のはた
たばこのうねの想ひあり

夏のうたげにはべる身の
声をちゞれの髪をはぢ
南かたぶく天の川
あはれはかなとすかし見る。



(下書稿4推敲前)

夜をま青き藺むしろに
ひとびとの影さゆらげば
遠き山ばた谷のはた
たばこのうねの想ひあり

夏のうたげにはべる身の
ちゞれた髪はぢ声をはぢ
南かたぶく天の川
ひとりたよりとすかし見る



(下書稿3 孔雀印手帳90頁)

夜をま青き藺むしろに
ひとびとの影さゆらげば
遠き山ばた 谷の畑
たばこのうねの想ひあり

夏のうたげにはべる身の
ちゞれの髪恥ぢ 声をはぢ
南かたぶく 天の川
ひとりたよりと すかし見る



(下書稿2推敲後)

夜をま青き藺筵に
ひとびとの影さゆらげば
あはれ山畑谷の畑
たばこばたけのおもひあり

ちゞれ髪をはぢ声をはぢ
身も世もあらで歌なせば
老いたる客はさりげなく
星のけぶりをすかし見ぬ



(下書稿2推敲前)

夜をま青き藺筵に
ひとびとの影さゆらぐは
きのふもけふもめぐり来し
たばこばたけのおもひあり

老いて手ふるふまろうどの
みなみのそらをすかし見つ
ちゞれし髪を恥づる女は
ひとりはかなくものうたふ



(下書稿1推敲後)

土性調査慰労宴

酔ひて博士のむづかしく
大学出なる町長も
たゞさりげなくあしらへば
接待役の郡技手も
髪ちゞれたる歌ひめも
眉をひそめて按じたり

青き藺草の氈の上に
ほかげそゞろにさゆらげば
身はなほ日ごろめぐり来し
たばこばたけのふぜいなり

酒得て呑まず酔はざらば
西瓜を喰めとすゝむるは
古武士のさまに袴せし
組合村の長なれや

ひくき格子の窓のはて
ま夏はひそむ山峡を、
銀河は亘る南ぞら
ほのかに白くけぶりせり



(下書稿1推敲前)

土性調査慰労宴

酔ひて博士のむづかしく
慶応出でし町長も
たゞさりげなくあしらへば
縮れし髪を油もて
うち堅めたるをみな子も
なすべきさがを知らぬらし

面をひそめて案ずるは
接待役の郡の技手

ことあたらしくうちしける
青き藺草の氈の上に
人人のかげさゆらげば
昨日も今日もめぐり来し
たばこばたけのおもひあり

また人人の膳ごとに
黄なる衣につゝまれて
三尾添へたる小魚は
昨日も今日もたどり来し
くるみ覆へるかの川の
中にれたる小魚なれ

村長われが前に居て
わが酒呑まず得酔はねば
西瓜を喰めとすゝむるは
組合村の長なれや

あゝこのま夏山峡の
白き銀河の下にして
天井ひくきこの家に
つどへる人ぞあはれなれ