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文語詩50/21

来賓

狩衣黄なる別当は、      眉をけはしく茶をのみつ。

袴羽織のお百姓、       ふたり斉しく茶をのみつ。

窓をみつめて校長も、     たゞひたすらに茶をのみつ。

しやうふを塗れるガラス戸を、 学童らこもごもにのぞきたり。



(下書稿3推敲後)

新年

狩衣黄なる別当は
眉をけはしく茶をのみつ

袴羽織のお百姓
ふたり黙して茶をのみつ

窓をみつめて校長も
たゞひたすらに茶をのみつ

しやうふを塗れるガラス戸を
学童らこもごもにのぞくなり



(下書稿3推敲前)

新年

狩衣黄なる別当は
眉を刻みて茶をのめり

袴羽織のお百姓
ふたり黙して茶をのめり

いよよもだして校長も
うすき緑茶をのめるなり

しやうふを塗れるガラス戸を
学童らこもごもにのぞくなり



(下書稿2推敲後)

新年

日高神社の別当は
眉をけはしく茶をのめり

はかまはをりのお百姓
ふたりちいさく茶をのめり

しやうふを塗れるガラス
児童らこもごもにのぞき行く

日高神社の別当は
なほその眉をうちきざみ
いよよもだして校長も
うすき緑茶をのめるなり



(下書稿2推敲前)

新年

日高神社の別当は
黄の狩衣によそほひて
眉をふかぶかと刻みつゝ
うすき緑茶をのめるなり

はかまはをりのお百姓
ふたりちいさく向ひゐて
いましもつげる校長の
うすき緑茶をのめるなり

ふぶきかがやくこのあした
しやうふを塗れるガラス
児童らこもごもにのぞけるは
水族館のけはひなり

四人もだしてひたすらに
うすき緑茶うのみにつゝ
日高神社の別当は
いよよに眉をきざむなり



(下書稿1推敲前)

日高神社の別当は
黄の狩衣によそほひて
けはしき眉に茶をのめり

これの部落に草分けの
はかまをはけるその二人
ひとしくともに茶をのめり

うらゝに濁る日本の
うすき緑茶をつぎ了へて
校長もまた茶をのめり



(先駆形口語詩「〔職員室に、こっちが一足はいるやいなや〕」)

職員室に、こっちが一足はいるやいなや
ぱっと眉をひそめたものは
黄の狩衣によそほへる
日高神社の別当だ
半分立って迎へるものは
黒紋付に袴をはいた
二人の小さなお百姓
当然ここで
ぼくが何かを云ふべきであるが
何せあのまっ青な大高気圧の下で
引き汐のやうに奔ってゐる
乾いて光る吹雪のなかを
二里も泳いでやってきたので
耳だの頬だのぼうぼう熱り
咽喉はひきつって声だ出ない
みんなだまってお茶をのむ
わづかに濁り粕もはいった日本の緑茶
校長さんもだまってお茶をつぎまはる
日高神社の別当は
怒らなくてもいゝわけだ
あの早池峰の原林を
いくらじぶんが先達で
夜なかにやってきたからといって
だまってみちに立ってゐる
こっちにいきなりつきあたって
叫びをあげて退いたのは
そっちの方が悪いのだ
アスティルベの花の穂が
あちこち月にひかってゐたし
そんな闇ではなかったのだ
けれども向ふの怒るのは
こっちの覇気でもあるらしい
こどもらがこっそりかはるがはる来て
がらすの戸から口をあいたりのぞくのは
水族館のやうでもある
おとなもそろそろ来てゐるやうだ
日高神社の別当は
いまだに眉をはげしく刻む