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文語詩50/2

〔水と濃きなだれの風や〕

水と濃きなだれの風や、   むら鳥のあやなすすだき、

アスティルベきらめく露と、 ひるがへる温石の門。


海侵す日より棲みゐて、   たゝかひにやぶれし神の、

二かしら猛きすがたを、   青々と行衛しられず。


(下書稿3)

水と濃きなだれの風や
むら鳥のあやなすすだき
ブルーベルきらめく露と
ひるがへる温石の門

海侵す日より棲み居て
たゝかひにやぶれし神の、
雲かはたこゝろのはてか
青々と行衛しらずも


(下書稿2推敲後C)

     早池峯中腹

水と濃きなだれの風や
むら鳥のあやなすすだき、
日は山の下背にあれど
ぬかとべる雲は燃えたり

山肌をはるかに覆ふ
緑茶せしカステラの堆
ブルーベルきらめく露と
うゐきやうの遠き香料


(下書稿2推敲後B)

     早池峯中腹

水と濃きなだれの風や
むら鳥のあやなすすだき、
日は山の下背にあれど
ぬかとべる雲は燃えたり

山肌をはるかに覆ふ
緑茶せしカステラの堆
ブルーベルきらめく露と
うゐきやうの遠き香料

碧き眼のすがるはふるひ
牛酪なせるウェーブライトや
こめつがの青き糖果は
むらさきの葡萄を生めり

耿々とひるがへりつゝ
温石の門は燃ゆるを
なほ茫と青み湛えて
北上の野はねむる


(下書稿2推敲後A)

     早池峯中腹

青ぞらの淵に泛べる
この山のあやしきすがな
菓子をもて盛られしに似て
妖精も出でなんけはひ

褐やまたオリーヴいろの
なめ石の門のかなたに
そらいましましろく燃えて
霧のむらしるくながるゝ


(下書稿2推敲前)

     早池峯中腹

水と濃きなだれの風や
むら鳥のあやなすすだき、
日は山の下背にあれど
ぬかとべる雲は燃えたり

青ぞらの淵に泛べる
この山のあやしきすがな
菓子をもて盛られしに似て
妖精も出でなんけはひ

山肌をうち覆へるは
緑茶せしカステラの群
ブルーベルきらめく露と
うゐきやうの奇しき香料

碧き眼のすがるはふるひ
牛酪いろのウェーブライトや
こめつがの青き糖果は
むらさきの葡萄を生めり

褐やまたオリーヴいろの
なめ石の門のしたにて
そらいましましろく燃えて
霧のむらしるくながるゝ

青々とうちも湛ゆる
北上の野はなほねむる


(下書稿1推敲後)

水と濃きなだれの風や
縦横の小鳥すだき
日は山の下背にあれど
ぬかとべる雲は燃えたり
つめたい霧のジェリイもあれば
はひまつは緑茶をつけしカステラのさましてならび
橄欖の蛇紋岩サーペンティン
青いつりがねにんじんの
ブリーベルきらめく霧と
うゐきやうの奇しき香料
碧き眼の蜂はふるひ
金平糖でもwaveriteの牛酪でも青いザラメつけしこめつが
そははやに葡萄を生めり
青くうち湛へて
ひでりする野のこどもたち
この青ぞらの淵に立つ
巨きな菓子の塔こそは
白堊紀からの贈物
あらゆる塵やつかれを払ふ
さながらの菓子ともなりて
この山のこゝにそびえば
そのむかし蜜うちなめて
幾年を経しとつたへし
この山のあやしきすがた
菓子をもて
盛られしに似る


(下書稿1推敲前)

     〔水よりも濃いなだれの風や〕

水よりも濃いなだれの風や
縦横な鳥のすだきのなかで
ここらはまるで妖精たちの棲家のやう
つめたい霧のジェリイもあれば
桃いろに飛ぶ雲もある
またはひまつの緑茶をつけたカステラや
茶や橄欖の蛇紋岩サーペンティン
青いつりがねにんじんの
花にきらめく一億の露
みやまうゐきやうの香料から
碧い眼をした蜂のふるふ
蜜やさまざまのエッセンス
オランダ風の金平糖でも
wavelliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな干した葡萄がついてゐる
青く湛える北上河谷こどもたち
この青ぞらの淵に立つ
巨きな菓子の塔こそは
白堊紀からの贈物
あらゆる塵やつかれを払ふ
その童心の源である



     山の晨明に関する童話風の構想

つめたいゼラチンの霧もあるし
桃いろに燃える電気菓子もある
またはひまつの緑茶をつけたカステーラや
なめらかでやにっこい緑や茶いろの蛇紋岩
むかし風の金米糖でも
waveliteの牛酪でも
またこめつがは青いザラメでできてゐて
さきにはみんな
大きな乾葡萄レジンがついてゐる
みやまうゐきゃうの香料から
蜜やさまざまのエッセンス
そこには碧眼の蜂も顫える
さうしてどうだ
風が吹くと 風が吹くと
傾斜になったいちめんの釣鐘草ブリューベルの花に
かゞやかに かがやかに
またうつくしく露がきらめき
わたくしもどこかへ行ってしまひさうになる……
蒼く湛えるイーハトーボのこどもたち
みんなでいっしょにこの天上の
飾られた食卓に着かうではないか
たのしく燃えてこの聖餐をとらうではないか
そんならわたくしもたしかに食ってゐるのかといふと
ぼくはさっきからこゝらのつめたく濃い霧のジェリーを
のどをならしてのんだり食ったりしてるのだ
ぼくはじっさい悪魔のやうに
きれいなものなら岩でもなんでもたべるのだ
おまけにいまにあすこの岩の格子から
まるで恐ろしくぎらぎら熔けた
黄金の輪宝くるまがのぼってくるか
それともそれが巨きな銀のラムプになって
白い雲の中をころがるか
どっちにしても見ものなのだ
おゝ青く展がるイーハトーボのこどもたち
グリムやアンデルセンを読んでしまったら
じぶんでがまのはむばきを編み
経木の白い帽子を買って
この底なしの蒼い空気の淵に立つ
巨きな菓子の塔を攀ぢやう