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文語詩50/19

〔萌黄いろなるその頚を〕

萌黄いろなるその頚を、  直くのばして吊るされつ、

吹雪きたればさながらに、 家鴨は船のごとくなり。


絣合羽の巡礼に、     五厘報謝の夕まぐれ、

わかめと鱈に雪つみて、  鮫の黒身も凍りけり。



(下書稿)

萌黄いろなるその頚を
直にのばして吊るされつ
吹雪きたればさながらに
子鴨は艦のごとくなり

絣合羽の巡礼に
五厘報謝の夕まぐれ
わかめ赤魚に雪つみて
鮫の黒身は凍りけり



(先駆形口語詩「四一五 〔暮れちかい 吹雪の底の店さきに〕」)

一九二五、二、一五、

暮れちかい
吹雪の底の店さきに
萌黄いろしたきれいな頚を
すなほに伸ばして吊り下げられる
小さないちはの家鴨の子
   ……屠者はおもむろに呪し
     鮫の黒肉みはわびしく凍る……
風の擦過の向ふでは
にせ巡礼の鈴の音