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文語詩50/14

〔月の鉛の雲さびに〕

月の鉛の雲さびに、    みたりあやつり行き過ぎし、

魚や積みけんトラックを、 青かりしやとうたがへば、

松の梢のほのびかり、   霰にはかにそゝぎくる。



(下書稿8推敲後)

月の鉛の雲さびに
みたりあやつり行き過ぎし
浜の問屋のトラックを
青かりしやとうたがへば
松の梢のほのびかり、
縹ならしを松並木
霰にはかにそゝぎくる



(下書稿7推敲後・下書稿8推敲前)

月の鉛の雲さびに
みたりあやつるトラックの
縹ならしを松並木
霰にはかにそゝぎくる



(下書稿7推敲前)

月の鉛の雲さびに
はなだとみえしトラックの
はせ行きすぎて松並木
霰にはかにそゝぎくる



(下書稿6推敲後)

月の鉛の雲さびに
はせ行きすぎしトラックの
青をおもへば松の髪
霰にはかにそゝぎくる



(下書稿6推敲前)

月の鉛の雲さびに
おのれとおのれ罵りて
醉ひし助役の帰り行く

月の鉛の雲さびに
はせ行き過ぎしトラックの
緑をひとりあらがへば
みぞれにはかにそゝぎくる



(下書稿5推敲後)

おのれとおのれ罵れば
みぞれにはかにそゝぎくる

はせ行き過ぎしトラックの
青りの(以下空白)

(2行分空白)

月の鉛の雲さびに
罪投げやれどすべもなし



(下書稿5推敲前)

線路

死なんとそらになげかへば
みぞれにはかにそゝぎくる

はせ行き過ぎしトラックの
青く塗られし(以下空白)

(2行分空白)

月の鉛の雲さびに
罪投げやれどすべもなし



(下書稿4推敲後)

はせ行く黒のトラックを
みぞれにはかにそゝぎくる

月の鉛の雲さびを
何かののしり帰るひと



(下書稿4推敲前)

はせ行く汽車の窓あかく
みぞれにはかにそゝぎくる

地平さびしき縞なして
みぞれにはかにそゝぎくる

月の鉛の雲さびに
罪なげかへどすべもなし



(下書稿3推敲後)

ひたすらおもひたむれども
きみがおもかげなほさらず

はせ行く汽車の窓あかく
みぞれにはかにそゝぎくる

月の鉛の雲さびに
声なげやれどすべもなし、

遠ざかりゆく汽車の灯と
地平さびしき縞なせり



(下書稿3推敲前)

ひたすらおもひたむれども
きみがおもかげなほさらず

はせ行く汽車の窓あかく
みぞれさびしく降りくるを

月の鉛の雲さびに
声なげやれどすべもなし、

遠ざかりゆく汽車の灯と
地平さびしき縞なせり



(下書稿2’)

月の鉛の雲さびに
罪業つみ投げやれどすべもなし



(下書稿2推敲後)

はせ行く汽車の窓あかく
みぞれさびしく降り来る

 (ひたすらおもひたむれども
  この恋しさをいかにせん
  あるべきことにあらざれば
  よるのみぞれを行きて泣く)

遠ざかりゆく汽車の灯と
地平かなしき縞なせり



(下書稿2推敲前)

はせ行く汽車の窓あかく
過ぎ(以下空白)

みぞれさびしく降り来る

(きみがまことのたましひを
まことにとはにあたへよと
いなさにあらずわがまこと
まことにとはにきみよとれと

線路のはてのうすあかり

(ひたすらおもひたむれども
この(3字分空白)をいかにせん
あるべきことにあらざれば
よるのみぞれを行きて泣く)

線路のはてのうすあかり
遠ざかりゆく汽車の灯と
地平の森の黒ければ
天はかなしき縞をなす



(下書稿1推敲後)

月の鉛の雲さびに
罪業つみ、投げやれど
すべもなし。



(下書稿1推敲前)

月の鉛の雲さびに
罪なげ送れども
すべもなし。



(先駆形・冬のスケッチより)

     ※ 線路

汽車のあかるき窓見れば
こゝろつめたくうらめしく
そらよりみぞれ降り来る。

     ※

まことのさちきみにあれと
このゆゑになやむ。

     ※

きみがまことのたましひを
まことにとはにあたへよと
いなさにあらずわがまこと
まことにとはにきみよとれと。

     ※

ひたすらにおもひたむれど
このこひしさをいかにせん
あるべきことにあらざれば
よるのみぞれを行きて泣く。

     ※

まことにひとにさちあれよ
われはいかにもなりぬべし。
こはまことわがことばにして
またひとびとのことばなり。
されどまことはこのねがひ 
かなしさになみだながるる。

     ※

みぞれのなかにいのるとき
応はひゞきのごとくなり
はかなき恋をたちいでて
まことのみちにたちもどる。