目次へ  縦書き

文語詩50/12

悍馬〔一〕

毛布の赤にを縛び、    陀羅尼をまがふことばもて、

罵りかはし牧人ら、     貴きアラヴの種馬の、

息あつくしていばゆるを、  まもりかこみてもろともに、

雪の火山の裾野原、     赭き柏を過ぎくれば、

山はいくたび雲潝の、    藍のなめくじ角のべて、

おとしけおとしいよいよに、 馬を血馬となしにけり。



(下書稿5推敲後)

悍馬図

毛布の赤にむす
陀羅尼をまがふことばもて、
罵りかひつ牧人ら
貴きアラヴの種馬の
息あつくしていばゆるを
まもりかこみてもろともに
雪の火山の裾野原
赭き柏を過ぎくれば
山はいくたび雲潝の
藍のなめくじ角のべて
おとしけおとしいよいよに
馬を血馬となしにけり



(下書稿5推敲前)

牧人

火山の雪を雲潝の
青きなめくじいくたびか
角うちのべてすべりくる
柏ばやしの枯れはらを
毛布の赤にむす
陀羅尼をまがふことばもて
罵りかひつ牧人ら
貴きアラヴの種馬の
息熱くしていばゆるを
まもりかこみて過ぎ行きにけり



(下書稿4)

牧人

火山の雪を雲潝の
青きなめくじいくたびか
角うちのべてすべりくる
柏ばやしの枯れはらを
毛布の赤に頭を縛び
陀羅尼をまがふことばもて
ののしりかはしまき人ら
貴きアラヴの種馬を
うちかこみつゝ過ぎにけり



(下書稿3推敲後)

牧人

火山の雪を雲潝の
青きなめくじいくたびか
角うちのべてすべりくる
柏ばやしの枯れはらを
毛布の赤にむす
陀羅尼をまがふことばもて
ののしり交はし赭枯れの
かしはのはらをよぎり行なれ



(下書稿3推敲前)

牧人

赤き毛布にぬかむすび
陀羅尼をまがふことばもて
ののしり過ぎし牧人の
肩うちゆするかなたには
火口を過ぐる雲潝の
青きなめくじいくたびか
雲をすべりて下るなれ



(下書稿2推敲後)

ひかりまばゆき雲のふさ、
わづかにゆるゝ栗のうれ、
赤き毛布にぬか結び
陀羅尼をまがふことばして
雪あえかなるこのみちを
牧人たちのい行くなれ
松のみどりは あせたれど
針つややかに波立たす



(下書稿2推敲前)

ひかりまばゆき雲のふさ
わづかにゆるゝ栗のうれ

松のみどりは あせたれど
針つややかに波立たす



(下書稿1断片)

毛布の赤に頭を縛び
陀羅尼をまがふことばもて